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ジャーナリズム

消費増税で経済危機、低所得層に深刻な打撃判明 衆院選で安倍首相に下された“ノー”

田中秀臣/上武大学ビジネス情報学部教授
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 かつて経済学者の宇沢弘文氏は、経済学者ジョン・メイナード・ケインズ氏の高弟アバ・ラーナー氏が語った次の「対話の作法」を紹介している。

「むかし、あるところに一人のラビ(ユダヤ教の教師)がいた。Aという人が相談にきたところ、ラビはお前のいうことはもっともだといった。つぎに、Aと争っているBという人がやってきたが、ラビはBに対してもお前のいうことはもっともだといったわけである。この経緯を傍で聞いていたラビの奥さんはいった。あなたはAに対しても、Bに対してもお前のいうことはもっともだといった。ところが、AとBとは争っているわけで、あなたのいうことはまったくおかしい。そこでラビは奥さんに向かっていった。お前のいうことはもっともだ」(『「成田」とは何か』<宇沢弘文/岩波新書>より)。

 社会的な分断をはらむ問題には、このような心構えと、対立した意見を聞く場の再構築が求められるだろう。

 第3に、自民党よりも「右傾化」していると評価されていた次世代の党の惨敗である。議員数の激減もそうだが、今回の選挙の目玉だった田母神俊雄氏も思ったほどには得票を伸ばすことができず、選挙区立候補者の最下位に甘んじた。評論家の古谷経衡氏は自身のツイッターで、「次世代の党的主張への同調を『右傾化』と表現するならぱ、日本と、多分若者は右傾化していない、という事が明らかになった。(略)有権者は良くも悪くも現実路線を選んだ」と指摘した。古谷氏の指摘は正しいだろう。

 以上の観点から極端な「保守化」に一定のブレーキがかかる結果になった、と筆者は推論している。もちろん安倍首相の政治的な最終目的が憲法改正にあることは、誰の目にも明らかである。経済学者の松尾匡氏が指摘しているように、今回の解散総選挙が憲法改正を目的として周到に練られた「合理的計画」の一部である可能性は否定できない(参照:http://politas.jp/articles/293)。ただその計画を実現できるかどうかは、最終的な決定権者である国民にあることを、安倍首相も我々も自覚しなければならない。

●機動的かつ効果的な財政政策の必要性

 では、安倍政権がまず取り組むべき政策とは何か。それはなんといってもデフレ脱却を核にした経済対策だろう。この点で、政権は現在最大の危機を迎えている。もちろんそれは4月の5%から8%への消費増税の悪影響が深刻なことにある。消費増税による消費の減少、つまりは生活の苦しさは、低所得層であればあるだけ大きい。

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