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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏(12月16日)

スゴすぎるタワシの秘密?高性能で特許取得、外国人デザイナー起用…転身組が仕掛ける革命

文=高井尚之/経済ジャーナリスト
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 各製造工程で寸法や重量の検査をし、最終検査では20項目以上の検査基準をすべて満たした商品だけを出荷する。天然素材のヤシやシュロを用いた手作りの高品質が特徴で、特許も取得している。同社が掲げる「亀の子束子が日本のたわし」のフレーズから誇りがうかがえる。

 昔からある商品「亀の子束子1号」は、現在1個313円(税込)。百円ショップや量販店でも類似品は売られているが、使っていくうちに違いはハッキリする。愛用者はそれを承知しており、実際に同社へ「日本に里帰りするたびに亀の子束子を買い求めています。使い続けて小さくなっても崩れないことに感銘を受けます」と米国在住の日本人女性から手紙が届いたこともある。筆者も地元の店で買って湯飲みを洗ったら、茶渋がきれいに落ちて小さな感動を覚えた。

 一方で核家族化が進み、亀の子束子を知らないまま育つ人も増えた。すべての食器をスポンジで洗う人も珍しくない。同社もスポンジ製品を出しており、広報担当者は「食器や調理器具の材質によって、最適な洗浄道具は違ってくるので、スポンジとタワシを使い分けるといいですね」と話す。

 若い世代に向けた地道な取り組みも続けている。本社のある東京・北区の小中学生を中心に、本社工場の見学とタワシ製造の作業を体験してもらう。作業工程やスペースの関係で大人数には対応できないが、東北地方の修学旅行生のグループが訪れることもあるという。

●商品の「ネガティブイメージ」を変える

 同社が最近力を入れているのは、タワシにつきまとうネガティブイメージを変えることで、それは商品開発から情報発信まで横断した取り組みだ。

 例えば、今年5月に発売した「白いたわし」という商品がある。従来型商品は、品質は高いが「自宅のキッチンには置きたくない」という声もあった。

 そこでコラムニストとして知られる石黒智子氏と共同で、現代的なキッチンに合うベーグルのようなデザインで色味も変えた商品を開発した。サイザル麻という素材を用い、やわらかい使い心地も特徴だ。評判は上々で、関西のローカル番組で紹介された時は公式サイトのサーバーが一時ダウンするほどだったという。

 10月には「LIZA(リザ)」シリーズを発売した。こちらはスリランカ人女性デザイナー・リザ氏によるデザインで、ホワイトパームをベースにアゾフリーの天然染料で着色した繊維を使用し、細いシマ目を入れたデザインが目を引く。色味は以前からあった同社商品「シマシマ」に似ている。ただしハートや8の字のような斬新な形で、針金が露出しないのもスタイリッシュだ。

 いずれも武骨なイメージが強かったタワシに、まろやかさを加えたように思える。

 一方、情報発信にも気を配るようになった。例えば、テレビ番組の景品抽選などのシーンで、大当たり賞「海外旅行」や「自動車」の隣には、残念賞として「タワシ」が並んでいることがあった。笑いを取るための演出だろうが、職人が丹精込めて手作りした商品に対して好ましくないイメージを植えつける可能性がある。最近は、テレビ局からの商品提供依頼に対して、扱い方をお願いしているという。

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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