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永井孝尚「企業の現場で使えるビジネス戦略講座」(12月17日)

顧客が “買わない”理由の検証は、なぜ失敗する?「ニーズ断捨離」の具体的手法

文=永井孝尚/オフィス永井代表

 国内業務用ミラーで市場トップシェアを誇るコミー社長の小宮山栄氏は、「日経トップリーダー」(日経BP社/09年8月号)のインタビュー記事『社員14名の世界企業コミー 信用が信用を生む、小さな市場の生存戦略』内で次のように語っている。

「売れなかった理由は、デザインが悪い、価格が高い、宣伝の仕方が悪いなど、誰でも山ほど言える。だから、たとえ1000人に声をかけて1人しか買わなくても、売れない理由をあれこれ考えるより、その1人がなぜ買ってくれたのかを深く聞く方が次につながると思う。われわれの立場から見れば、1つしか売れなくても、お客さまの立場からすれば『購入の決断』をしたのだ。そこのところを徹底的に追究していく」

 このように、実際に買った顧客がなぜ買ったのかを、事実を元に分析することが近道なのだ。

 つまり主観を排するためには、顧客のリアルなデータに基づき、買う理由を客観的に議論をする必要がある。実は社内を探してみると、これまであまり注意を払っていなかった顧客のリアルなデータは意外とたくさんあるものだ。

 例えば、過去に行ったアンケート結果や、製品やサービスに対するクレーム。コールセンターに届いた顧客の声も、重要な顧客データだ。顧客の購買情報も、リアルな顧客の姿を表している。

 実はこれらは「顧客が買う理由」を考える上で、ダイヤモンドの原石なのだ。それらのリアルなデータを目の前にして、関係者で議論をすると、新しい発見があるはずだ。例えば、

「高価格帯のこだわり商品を希望する顧客が増えている。ここ数年なかったことだ」
「これまで過半の顧客が製品群Aを買っていたのが、ここ1年間は製品群Bと併せ買いする顧客が急増している」
「少数派と思っていた顧客グループが成長している」

 このようにして、新しい傾向を発見できる場合が多い。発見に対して、さまざまな関係者が自分の経験で意見を交換し合うことで、さらに新しい発見が得られる。主観ではなくあくまで事実を元に、事実を組み合わせて「買う理由」を議論するということだ。それらを組み合わせて、(1)~(4)を一気通貫で考えていくのだ。

●仮説を体当たりで検証する

 ここで重要なことがある。上記のプロセスでつくった「顧客が買う理由」は、あくまで仮説であるという点だ。会議室で考えたアイデアは決して正解ではないのだ。だから、これだけでプロジェクトを進めてはいけない。

永井孝尚/ウォンツアンドバリュー株式会社代表

永井孝尚/ウォンツアンドバリュー株式会社代表

 マーケティング戦略アドバイザー。1984年に慶應義塾大学工学部を卒業後、日本IBMに入社。マーケティングマネージャーとして事業戦略策定と実施を担当、さらに人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を担当し、同社ソフトウェア事業の成長を支える。2013年に日本IBMを退社して独立。マーケティング思考を日本に根付かせることを目的に、ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表取締役に就任。専門用語を使わずにわかりやすい言葉でマーケティングの本質を伝えることをモットーとし、幅広い企業や団体へ年間数十件の講演やワークショップ研修を実施。さらに書籍・雑誌の執筆、メディア出演などで、より多くの人たちにマーケティングの面白さを伝え続けている。主な著書に、シリーズ累計60万部を突破した『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズ(全3巻、コミック版全3巻、図解版、文庫版)、『そうだ、星を売ろう』、『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』、『残業3時間を朝30分で片づける仕事術』(以上KADOKAWA)、『「戦略力」が身につく方法』(PHPビジネス新書)がある。最新著は『これ、いったいどうやったら売れるんですか? 身近な疑問からはじめるマーケティング』(SB新書)

・問い合わせ先:永井孝尚オフィシャルサイト

Twitter:@takahisanagai

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