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その意味で思い起こされるのは、06年にソニー製リチウムイオン電池が相次いで発火した事故である。ソニーは部品メーカーの立場のため、当局にリコールを申請せず、パソコンメーカーに対応をまかせた。しかし、世間の風当たりが強まるのを受けて、ソニーは問題のリチウムイオン電池の自主回収に踏み切った。タカタに求められるのは、あの時のソニーの姿勢だったのではないだろうか。
●死傷事故などの件数を過少申告
実はタカタのエアバッグを最も多く装備しているホンダは、NHTSAに提出した報告書で、03年7月から14年6月までの11年間にわたって、報告義務がある死傷事故などの件数を6割過少申告していたと発表した。1729件のうち8件はタカタ製エアバッグに関する事故だった。つまり、ホンダはいつの間にか品質に対する目配りを欠いていたわけだ。
追い込まれたホンダは、早期収拾に動いた。ホンダにとって北米市場は文字通り金城湯池だ。ホンダの販売台数の4割が北米市場の売り上げだし、利益の3割8分を同じく北米で稼いでいる。かりにも、欠陥エアバッグ問題で北米市場を失えば、ホンダの屋台骨を揺るがしかねない。
12月3日の米公聴会で、ホンダ現地法人のリック・ショスティック上級副社長は、「全米にリコールを拡大し原因究明を進める。費用もホンダが負担する」と、踏み込んだ発言をした。この時点で、ホンダはやっと事態の重大性を認識し対策に乗り出した。
ホンダ会長で日本自動車工業会会長の池史彦氏は、同18日の自工会会見でタカタ製エアバッグの欠陥問題を受けて、次のように語った。
「自動車メーカーに火薬など化学品の知見が足りなかった」
前述のように、エアバッグの不具合はインフレーター内部の火薬に原因があるのではないかと指摘されている。確かに、焦点の火薬などの化学分野は、自動車メーカーからすればこれまでノーマークの極めて専門性の高い分野だ。
「調査の結果、経年劣化が一因であるとなった場合、今後の検討課題として、エアバッグについて定期交換をすべきかどうかの議論が開始されることもあります」(池氏)