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中沢光昭「路地裏の経営雑学」(1月6日)

実質賃金、20年前と変わらず 一億総“お金使わない”現象を生んだ日本の特殊性と原因

文=中沢光昭/経営コンサルタント
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 同省による昨年9月の毎月勤労統計調査(速報値)によると、物価変動分を考慮した実質ベースで現金給与総額は前年比2.9%減となり、マイナスが15カ月続いています。消費増税や円安による物価上昇に、賃金の伸びが追いついていないことになります。97年に消費税は3%から5%に上がり、昨年になって8%になり、やがて10%になろうかどうかという状況です。つまり、一般労働者にとっては20年近くも実質的に賃金が上がっていないことになります。老後に備えてお金が欲しいと思っても、まず足元の生活に安心感が出にくい状況がうかがえます。

 さらに、本来はセーフティネットになるはずの、そして実際にそうなっている年金制度も信頼できていないという人が多いのです。

 筆者の周囲でも、30代前半以下は年金制度について極めて冷めた見方を示しており、会社員は存在すら意識していません。半面、フリーで活動している層は、制度全体というより「毎月いくら払うのか」「老後はいくら受給できるのか」など詳しい情報を把握していますが、それでも年金制度に何も期待していません。なるべく払わないという選択を探ってしまいます。未払いと支払い免除の違いも理解しないまま、「目先のお金がないから」と言ってなんとなく未払いになっている人もいました。若いうちから年金に期待して生きて行くのもどうかと思いますが、生活に直結する国の制度が期待されていないというのは望ましい状況ではないでしょう。

●お金がなくても楽しく生きる若者

 では、日本国民は皆不幸な雰囲気を醸し出しているのかといえば、そうでもありません。自分の趣味嗜好や人生の目標に沿ったもの以外のことにはまったく価値を見いださず、財布の紐も固いというのが実像ではないでしょうか。アルコールへの出費など真っ先にカットです。20代によく見られるのは、「楽しく話すだけなら、誰かの部屋で缶ビール、学生食堂でコーヒーでも十分に楽しい」という極めて合理的な判断です。その「誰かの部屋」も単身で住んでいる人のマンションではなくシェアハウスなどでわいわいやっていたりして、とっても楽しそうです。価値観は人それぞれですので断言はできませんが、過剰に将来のことを心配するのではなく毎日を楽しむことは、生きる力なり人生を楽しむためのコツであるように思えます。

 ただ、お金持ちの高齢者も若者も、自分の意思でお金を使わないような流れは存在します。併せて、最近は少し底を打ったのかもしれませんが、少子化・晩婚化のあおりで労働人口減少、そして人口全体の減少へとつながっていきます。大半の企業や人材が自由に海外進出できるわけはなく、市場全体の縮小や衰退を少なからず意味しています。そのような中で、高齢者になって自由に働けなくなった時にも最低限の生活は保障されていると思えるのか、思えないのかによって、自由に労働できる現役世代の取れる選択肢の幅や気分が違ってくるのではないでしょうか。老後も一定レベルの生活が保障されていると実感できれば、資産の世代間移転も進み、より多くの人がお金の問題から解放されることで、人生の選択肢は広がるのではないでしょうか。

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