イオン、楽天…自社経済圏への顧客囲い込み戦争 新決済サービス続出、クレカ終焉か
米国では、クレジットカードとデビットカードが個人の決済方法の40%以上を占め、それに小切手を足すと60%を超す。従って、イーベイ傘下の決済サービス会社のPayPalや、グーグル、アップルも既存のクレジットカードに頼って決済サービスを提供せざるを得ないのだ。
グーグルの決済サービス「Google ウォレット」は、グーグルがクレジットカードのマスターカードをスマホに割り当てるスタイルを取っている。スマホの所有者がマスターカードを申し込むわけではないので、カード会社が信用調査をする必要もない。Google ウォレットで買い物をすると、グーグルは利用者が選んだクレジットカードかデビットカードに課金する2段階方式を採用している。
アップルの場合は、利用者は最初に自分のクレジットカードの必要事項を入力しなくてはいけないが、あとはスマホを専用カードリーダーにかざすだけで支払いができる。カード番号は店側にはわからないから、通常のクレジットカードよりセキュリティが高いことを売りにしている。
グーグルが決済サービスを提供する目的は、消費者の購買データがほしいからだといわれている。しかしアップルは購買データを収集しないと明言しているので、新製品の機能を高めることが目的かもしれない。
●利益の少ないスマホ決済
これらと一線を画しているのが、ツイッター創業者の一人であるジャック・ドーシー氏が始めた「スクエア」で、事業ターゲットは中小規模の小売業やサービス店舗だ。スクエアが提供するシステムを使えば、スマホやタブレットをレジ代わりにしてクレジットカードで決済ができる。スマホのイヤホンジャックに500円玉大の専用カードリーダーを取り付け、クレジットカードを通せば決済できる。店側にとっては、レジ端末やクレジットカード専用端末が不要で無料配布されるアプリと専用カードリーダーだけあれば利用できるため、初期投資がほとんどない。しかも、スクエアは小売店が業績を上げるために必要なデータ管理や分析ツールも提供する。例えば、顧客が一番多く来店する時間帯や、雨天と晴天では売り上げがどれほど変わるかなど、個人商店がこういったデータをもとにマーケティング効率を向上することができるような無料アプリが充実している。
アマゾンも同じく中小の店舗や屋台など移動店舗のようなサービス業者をターゲットに、スクエアと似たような決済ツールを14年夏に発売した。この種の決済サービスはコーヒーショップなどに重宝されるだろうが、サービス提供者にとっては利益率が薄く、スクエアは13年に1億ドルの損失を出したといわれる。もっとも、アマゾンの目的は消費者の店舗における購買情報を収集することにあるとみられており、決済サービスで儲けなくてもよいのだろう。
日本でも、楽天やコイニ-のように、スクエアやアマゾンと似たサービスを提供している企業がいくつかある。こういった企業は、目的はさまざまであっても、POSレジメーカーの脅威となることに間違いはないだろう。