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石堂徹生「危ない食品の時代、何を食べればよいのか」(1月13日)

農業の大規模化・企業参入促進という愚行 経済・雇用・食料自給率に打撃、自然資源劣化も

文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

 06年秋から08年夏にかけて低い在庫水準に干ばつ、バイオ燃料向け穀物需要、投機資金流入、穀物輸出規制などが加わって、米と小麦、大豆、トウモロコシのすべてが過去最高を記録(08年2~7月。【編注1】)するなど、主要食料の国際価格が高騰した。そのため40カ国近くが食料危機に陥り、南米やアジア、アフリカなどの途上国で暴動や抗議などが続いた。

 本来、先進国の企業農業や大規模な家族農業などは、世界の食料安全保障の役割を担っているはずだが、自ら干ばつなどの被害を受け、食料危機を招く引き金になった。しかも被害を受けても農業保険や政府援助などでカバーされることが多く、逆に被害を受けなければ価格高騰の恩恵を受けた。

 片や、小規模家族農業はどうなったのか。

 例えばアフリカなどの発展途上国の場合、家族農業の多くが食料を自給できず、食料の一部を購入しているため、価格高騰で食料を購入できずに栄養不足に追い詰められた。さらに食料危機による世界の食料安全保障システムの破綻を機に、アフリカなどに対する外国企業などの買収・長期賃貸による大規模土地投資【編注2】が増え、「農地収奪」「新植民地主義」だとして大きな問題になった。この投資では外国労働者が輸出向けなどの農作物を生産することも多く、投資受け入れ国にとっては雇用にも食料安全保障にも役に立たないと批判された。

 さらに、11年にFAOが、化学肥料や農薬、大型農業機械などを集中的に投下する世界的な大規模集約農業による、土地や水、生物多様性など自然資源の劣化について警告を発した。
 
 このような世界的な主要食料生産システムに対する危機感を背景に、持続可能な小規模家族農業が浮上し、再評価されることになった。ボスク氏は、小規模家族農業の価値について、次のような旨を同シンポジウムで指摘した。

(1)生産効率が高く(先の中国の例)、食料安全保障と国の経済成長に果たす役割が大きい。家族農業ではがんばるほど収穫量・収入が増え、労働意欲を高めるインセンティブ(やる気を起こさせる刺激)が働く。雇用労働依存の企業農業は管理コストなどが高い。
(2)女性や高齢者などに働く場を提供する。
(3)失業者の受け皿になるなど、社会的セーフティネットとしての機能を果たす。
(4)農外収入によって経営が安定する。
(5)農薬・化学肥料、大型機械などの投入が少なく、生物多様性保存や在来種保護に貢献する。

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

1945年、宮城県生まれ。東北大学農学部卒。養鶏業界紙記者、市場調査会社などを経て、フリーに。現在、農業・食品ジャーナリスト

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