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清水和夫「21世紀の自動車大航海」(1月15日)

夢のクルマ「MIRAI」がヤバすぎる!上質な乗り心地&低価格を実現したトヨタの底力

文=清水和夫/モータージャーナリスト、日本自動車研究所客員研究員

夢のクルマ「MIRAI」がヤバすぎる!上質な乗り心地&低価格を実現したトヨタの底力の画像1トヨタ自動車「ミライ」
 トヨタ自動車は12月15日、量産型として世界初となるセダン型燃料電池車(FCEV、またはFCV)「MIRAI(ミライ)」を723.6万円(税込)で発売。本田技研工業(ホンダ)も「FCVコンセプト」と称して2015年度中にFCVの市販を目指すことをすでに発表している。

 FCVはまだ生まれたての技術なので、どちらが優れているかという比較をする段階ではない。思い返せば12年前の小泉内閣に、トヨタは「クルーガー」をベースに開発したFCVを納車したことがある。その時は量産車とはいえない試作車レベルだったが、今回は普及を目指した本格的量産車としてMIRAIが開発されたのである。

 そのMIRAIをクローズドされたワインディングコースで試乗した印象を、今回リポートしよう。MIRAIはフロントが駆動するFWD方式を採用するミドルサイズセダンなので、おそらく退屈なクルマであろうと予想していた。しかし、いざ走りだすと静かでトルキーで、しかも乗り心地が非常に良いのだ。車両価格700万円台にふさわしい高級車だと思った。

 さらにプロトタイプとはいえ、ハイペースでワインディングを走ると、その軽快なハンドリングに驚いた。心臓部のスタックは小型化され、床下の中央に配置されている。そのため、フロント荷重は59%とFWD車としては前例がないほどに軽い。しかも重量物が床下にあるため、重心が低いというご利益がある。エンジンルームにはインバーターやモーターが配置されているが、高圧の水素タンクは2分割されてリアシートの下側にバッテリーを挟むようにして配置される。

 FCVは従来の内燃機関車のようにエンジンをフロントのボンネット下に収める必要がないから、パッケージの自由度が高いことも特徴だ。12年前は1台1億円ともいわれていたが、今回のMIRAIはカムリクラスのハイブリッドを基盤として開発されたので、コストダウンが可能となった。

 なぜFCVにハイブリッド技術が必要なのか。その理由は、エンジンをスタックに置き換えれば、FCVとして非常に高効率なパッケージとなるからだ。MIRAI市販化の背景には、17年も続いたハイブリッド技術が貢献している。もちろん排気管からは水しか出ないので、完全なゼロ・エミッション車として使われる。そうなると航続距離が気になるところだが、トヨタ社内の計測ではJC08で700kmと十分な距離を走ることができるという。充填は700気圧で満タンにするのに、わずか3分しかかからない。

ガソリン車並みの燃料コスト

 さて、クルマの使い勝手はよくわかった。しかし実際に使うとなると、気になるのは今後の水素ステーションのインフラ整備だ。当面は東京から福岡までのNEXCO中日本、西日本を貫く太平洋側に100カ所ほどのスタンドが整備されるだろう。その後はFCVの普及と併せてスタンドも増えることが計画されている。もうひとつ気になるのが水素の価格だ。現在は、さまざまなモノから水素をつくることができるが、ガソリンハイブリッド車と同程度の燃料移動コストが考えられている。先日、岩谷産業から発表されたリリースによると水素1kg当たり1100円となるそうだが、これは妥当な線だろう。

 それにしても、ほんの少し前まで夢のようなクルマだったFCVが、補助金を使うと500万円台で買える時代が本当に実現したのである。まさに、ドリームズカムトゥルーである。
(文=清水和夫/モータージャーナリスト、日本自動車研究所客員研究員)

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