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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

サムスン、「傲慢と過信」で内部崩壊の兆候 日本半導体、「過剰品質」で復活のシナリオ

文=湯之上隆/微細加工研究所所長
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 筆者が以下のように回答すると、またも投資家たちは驚きを隠せない様子をみせた。

「日本は、パラダイムシフトも、韓国メーカーの躍進も知っていた。しかし、品質をダウングレードすることができなかった。25年保証の高品質DRAMでの成功体験と、技術では世界一という過信が変革の妨げになった。日本にとっては、そこそこの品質のDRAMを安価に製造することは簡単ではなく、だからこそ、それが破壊的技術となって日本を凋落させた」

●韓国は日本と同じ道をたどるのか?

 メインフレームからPCへのパラダイムシフトに乗じてDRAM世界シェア1位になった韓国が今後どうなるのかは、投資家にとって重大な関心事だった。現在、韓国の半導体メーカーはうまくやっている。例えばサムスン電子は、世界中に5000人にも上る現地マーケッターを配置し、情報収集している。これが奏功してPCからスマートフォン(スマホ)へのパラダイムシフトにも見事に適応し、GALAXYは出荷台数で米アップルのiPhoneを大きく上回り、同社の稼ぎ頭となった。

 しかし筆者は、順風満帆のサムスン電子に対して、2つの懸念材料があることを指摘した。

 ひとつは、サムスン電子が「日本にはもう学ぶものなどない」と言い始めていることだ。日本をDRAM撤退に追い込み、東芝が発明したNANDフラッシュで世界シェア1位を奪い、薄型テレビでもスマホでもシェア1位となったサムスン電子にとって、周回遅れの日本は取るに足らない存在に見えるからだろう。

 しかし、歴史をひもとけば、国も産業も企業も、外敵に攻め込まれて崩壊するのではなく、内部から崩壊していくのである。日本の凋落も、低価格DRAMで韓国勢に攻め込まれたことより、「日本の技術は世界一」とうぬぼれ、自己改革ができなかったことに大きな原因がある。サムスン電子が「日本に学ぶべきものはない」と傲慢な姿勢になっているとすれば、かなり危険な兆候だ。

 もうひとつの懸念材料は、サムスン電子の絶対的なオーナー経営者であるイ・ゴンヒ会長が、昨年5月初旬に急性心筋梗塞で入院したことである。イ会長は87年にサムスングループの会長に就任し、以降27年間にわたってサムスンのトップに君臨し続けてきた。特にイ会長の専権事項とされる人事については、信賞必罰を徹底しており、成果を出せない幹部には解任など非情な判断が下される。幹部の定期人事は12月上旬にあるため、元幹部は「11月になるといまでも胸が締め付けられるような緊張感を覚える」と話す(14年5月17日付日本経済新聞より)。

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