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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

サムスン、「傲慢と過信」で内部崩壊の兆候 日本半導体、「過剰品質」で復活のシナリオ

文=湯之上隆/微細加工研究所所長
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 筆者の意見は、ずばり「スマホの次はクルマ」だ。その理由を、図5を使って解説した。20年は、スマホ30億台、タブレット端末10億台、PC3億台、自動車1億台の出荷が予測される。スマホやタブレットに対して、自動車のボリュームはずいぶん小さいが、それでも「スマホの次はクルマ」と考えるのは、20年に自動運転車が実現するかもしれないからだ。

 自動運転車は、「人を検出してぶつからないようにする」「クルマ同士が交信して衝突回避する」「道路と交信して、自動的に目的地に到達する」などの機能が想定されている。現在のクルマにも100個ほどの半導体が使われているが、自動運転を実現するには、次元の異なる高性能かつパワフルな半導体プロセッサが数十~100個単位で必要になると考えられる。例えるなら、自動運転の実現は、昆虫のような節足動物がほ乳類に進化するぐらい劇的なことだ。

 もしも100個の高性能プロセッサを必要とする自動運転車が20年に実現すれば、予想出荷台数は1億台で、100億個の高性能プロセッサ市場が新たに創出されることになる。プロセッサ1個100ドルと仮定して、1兆ドルの巨大市場が出現する。

 では、その自動運転車用高性能プロセッサを制するのは誰なのか? 現在、車載半導体ではルネサスが世界シェア1位を占めている。その背景には、トヨタ自動車など世界的に競争力が高い日本の自動車メーカーの存在がある。ルネサスは日本の自動車メーカーの下僕的な存在ではあるが、継続的な取引実績があるのは紛れもない事実だ。また、気温-40~200℃、湿度95%、50Gの振動で20年間正常に動作する極めて高い信頼性が要求される車載半導体においては、日本の凋落を招いた過剰品質の企業文化が、逆に競争力となる。

 自動運転車の時代になれば、超高品質への要求は、より高度化する公算が高い。つまり、ルネサスには、自動運転車の時代の超高品質車載半導体でも、世界シェア1位を守り続ける可能性がある。これが、私が考えるルネサス再生のシナリオだ。このシナリオに投資家たちは驚く一方で、経営状態が悪化しているルネサスに、そんな超高品質でパワフルなプロセッサをつくることができるのか懐疑的でもあった。しかし、筆者が「20年までに、ルネサスはトヨタかデンソーに買収されているかもしれない。自動運転車のシステム設計はトヨタやデンソーに任せ、ルネサスは超高品質半導体の製造に徹すればよい」と説明すると、多くが納得したようだった。

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