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山田修「展望!ビジネス戦略」(1月18日)

トヨタ、特許無償提供の衝撃 世界中から無視され不発か、FCV本格普及のリーダーか

文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役
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 思い起こされるのが、1970年代に起こった「ビデオ戦争」である。ソニーが開発したベータと、日本ビクターが開発したVHSが、家電メーカーを2分しての規格戦争を繰り広げた。技術的には必ずしも優位ではなかったVHSが勝利したのには「ミスターVHS」といわれた日本ビクターの高野鎮雄事業部長(当時)の存在があった。高野氏が松下幸之助を説得して松下電器産業(現パナソニック)を自陣に組み入れることに成功した。

 今のトヨタに、欧州の自動車メーカーを説得しきれるような「ミスターFCV」はいるのだろうか。特許を公開しただけでは、世界中の自動車関連企業が賛同してくれるはずはない。
恐らく特許の無償公開だけでは陣営づくりは進まない、と筆者は見ている。たとえトヨタがOEM供給(相手先ブランド名製造)をしようにも、現時点では同社の製造キャパシティは圧倒的に小さい。といって、まさかトヨタが他社に補助金をばらまくわけにもいかないだろう。

 例えば、アライアンスを組んでくれる自動車メーカーの販売エリアにおける水素ステーション開設支援というのが、トヨタがすべき提案なのではないか。水素ステーションを1カ所新たに開設するには5億円ほどかかるとされている。純利益2兆円のトヨタなら、4000ステーションも設置できる。もちろん、トヨタ自身が開設するのではなく、それぞれの国で有力な水素ステーション会社へ出資したり、融資などを行うかたちで展開するのがいい。

 FCVの全面的な普及のためには、アライアンスづくり、そしてインフラづくりまでトヨタが戦略を策定・実施していく必要があるだろう。モノをつくらせれば世界屈指であるこの偉大な三河の田舎企業が、世界的な合従連衡を仕切っていく洗練した外交を発揮することができるのか。けだし見物である。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
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