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赤字転落、会員激減…ベネッセ、“過去を全否定”改革 現場大混乱も原田社長の想定内

文=編集部
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●塗り替わる通信教育業界の勢力図

 ベネッセHDは55年1月、福武哲彦氏が岡山市で福武書店を設立、中学生向けの書籍発行を始めたのがルーツだ。86年に家業を引き継いだ總一郎氏は、小中高生向け通信添削講座「進研ゼミ」に経営の軸足を移し、大成功を収めた。今や、幼児教育から小中高校の受験教育、社会人の英語の資格まで手掛ける一大教育コンツェルンを築き上げた。

 通信教育の雄といわれたベネッセHDが変調を来したのは13年からだ。この間、2年あまりで会員数が40万人も減り、14年4月時点で365万人にまで落ち込んでいた。ベネッセが得意としてきたダイレクトメール(DM)を使った新規顧客開拓の手法が通用しなくなってきた。同社の前に立ち塞がったのが、通信教育に新規参入してきたジャストシステムだった。ジャストは文書作成ソフト「一太郎」で一時代を築いた会社だが、日本でしか通用しないソフトだったため経営が悪化。09年4月、FAセンサーメーカーのキーエンスの傘下に入った。

 ジャストは脱「一太郎」を目指し、2年をかけて子供に人気の高いタブレット(多機能携帯端末)を核にした新商品を開発。12年11月、小学生向けにタブレットを使った通信教育システム「スマイルゼミ」を発表し、通信教育事業に参入した。タブレットを使用した学習システムという斬新さや先見性が受け、会員数は順調に増加。タブレットを利用した授業用の統合ソフトを14年6月に投入し、アクセルを踏み込んだ。

 ジャストのタブレット通信教育システムが、通信教育業界の勢力図を劇的に塗り替えつつある。ベネッセHDはタブレット型通信教育で遅れを取り、危機感を持った總一郎氏は、「プロ経営者」と呼ばれる原田氏に通信教育の立て直しを頼んだのである。会長兼社長に招かれた原田氏は、DMを使った営業手法を転換し、タブレット端末などに対応した教材の開発に乗り出すことにした。

●原田氏の想定内

 その矢先に、ベネッセHDから流出した顧客情報257万件をジャストが利用していたことがわかった。原田氏がジャストに向けた非難の舌鋒は鋭かった。昨年7月9日の会見では名指しこそ控えたものの、漏洩情報を営業活動に使ったジャストの経営陣の倫理観を問う発言を繰り返した。謝罪会見の場で競合企業を非難するというのは、通常ではまず考えられない。原田は「ベネッセは被害者だ」として、「加害者のジャスト」に牙を剥いたのである。

 それから8日後の7月17日の会見で原田氏は「ベネッセは加害者か被害者か」と記者に質問されると、本音ではないことがわかるような顔つきで「迷惑をおかけしたという意味では加害者だと思っている」と答えた。

 ベネッセHDの再生・黒字化に向けて、原田氏は組織・人事など全領域で大幅な構造改革を加速させる。現場に大混乱を招いているが、原田氏には想定内のことだ。
(文=編集部)

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