NEW
西川淳「ボンジョルノ!クルマ」(1月21日)

トヨタ、特許無償提供でみせた限界と危機感 アップルら異業種参入の排除狙いか

文=西川淳/ジュネコ代表取締役、自動車評論家
【この記事のキーワード】, ,

●FCVに注力する理由

 では、なぜトヨタはそこまでして、EVではなくFCVに力を入れるのだろうか。

 もちろん、自動車に限らず、水素社会の実現には地球環境を守るという点で大きな可能性がある。大義があるといっていい。現時点では化石燃料の改質による水素製造には二酸化炭素(CO2)削減という大命題に反するという弱点を抱えてはいるものの、将来的にCO2の再利用といった技術が進めば、化石燃料やソーダの精製製造工程における副生ガスとしての水素活用にも弾みがつくだろう。

 その一方で、自動車をつくり続け、その巨大な産業構造を維持していくことが大命題の自動車メーカーにとって、比較的構造が簡単でテレマティクスや自律運転との相性もいいEVに積極的に取り組むことは、例えばグーグルやアップルといった異業種からの参入を招きやすいという点で、諸刃の剣にもなりうる。

 それよりも、部品点数も多くビジネスの視点で参入可能なインフラが期待でき、プレーヤーの数がEVに比べて圧倒的に多いFCVに注力するほうが、産業界の盟主であり続けられる可能性が高いし、産業規模を大きく維持できることは間違いない。ちなみにインフラ拡充に期待が持てる理由としては、水素ステーションビジネスに石油精製・元売り各社が積極的に関与していることが挙げられる。

 現時点で他の自動車メーカーは、トヨタのFCV関連技術の特許公開に関し一様に歓迎と驚きを表明しつつも、積極的に取り組むかどうかはわからない。これまでFCVに取り組めなかった中小メーカーやサプライヤーの研究開発の起点にはなりうるが、ホンダ・GM連合のように、ある程度FCV実現のメドを立てたメーカーにとっては、トヨタの技術活用がどこまで有効なのかは判断の難しいところだろう。もちろん、多くのメーカーがトヨタの技術を使いだせば、部品コストも下がるだろうし、トヨタ方式で次世代FCVのスタンダードを確保することも可能だ。いずれにせよ、特許オープン化のインパクトは計り知れない。

●すでにトヨタのオープン化戦略は「当たった」

 トヨタは昨年12月、世界初セダン型量産FCVとなる「ミライ」を発売したが、率直にいえばユーザーにとってミライを購入・利用する上でダイレクトなメリットはほとんどない。高価で水素ステーションは身近になく、カタチは不格好で床はフラットにならないし、CO2排出量という観点でも水素製造工程まで考慮すればHVの「プリウス」とさほど変わらない。それゆえ生産台数も少ないわけで、市販するとはいうものの、個人ユーザーをまともに相手にしているとは思えない。

RANKING

5:30更新
  • 連載
  • ビジネス
  • 総合