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複雑化する同族企業の「後継者問題」(2)

スーパー「ライフ」を救った清水会長の「身内切り」 断腸の思いで弟を解任し非同族経営へ

文=長田貴仁/岡山商科大学教授、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー
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●「天才」ダイエー・中内功の死角

 できる人を見つけて、その人にふさわしい機会や場所を与える。経営者がその人を育てるのではなく、与えられた人は自力で育たなければいけない。そして、自分の思いを代わって実現してくれているかどうかを見張るのが、経営者の最も重要な仕事である。これをできるか、できないかが、経営者の器の大きさを決めるのだ。企業の大中小を問わず、トップ自ら手を出す人がいるが、それでは全体が見えない。人は得てして枝葉が目に付き気になるものだが、そうすると木が見えなくなり、ましてや森を見ることはできない。しかし、大所高所から見れば全体が見える。器用貧乏という言葉があるが、器用な人は小事が見えて、そこへのこだわりが生じる危険がある。だから、かえって不器用なほうがいいのだ。

 創業者の存在が重すぎたがゆえに破綻を招いた象徴がダイエーだろう。一代で巨大小売りグループを築き上げた中内功(正しくは、たくみへんに「刀」)は、90年代に長男の潤(元副社長)にバトンタッチを考えたが、低価格商品の開発やハイパーマートの多店舗化政策など潤が進めた戦略がことごとく失敗し、辞任に追い込まれた。

 中内は、後継者を育てるという意識が、どうしても希薄になっていたと考えられる。また、強烈なカリスマ経営者であったがゆえに、反発する役員は去り、残った者たちは自ら行動しようとはせず、中内の言葉を条件反射的に受け入れる癖がついていたのではないだろうか。このような環境下で同族経営を行ったとしても、子息の影響力が弱くなり、情報すら集まらないという状況を招くことだろう。

●慎重に外部から社長を登用

 清水は同じ戦中派で苦労した同世代として、またスーパーの先輩として中内を尊敬し、その経営手腕を高く評価していたが、後継者問題については意見を異にしていた。

 清水が後継者選びについて確信を得た時、「岩崎(高治)君をイギリスで見つけたものだから、帰ってきてすぐ三菱商事の社長に会い、『一緒に仕事をしたいから、リバプールにいる岩崎君をすぐ呼び戻して、うちの会社へ出してもらいたい』と頼んだ」という。しかし、岩崎は将来を嘱望された期待の星だっただけに三菱商事も手放したがらず、交渉し始めてから2年後、32歳になった岩崎をライフに迎えた。それから7年間、岩崎は食品スーパーの仕事を勉強し、経営者への道を歩んでいった。

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