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複雑化する同族企業の「後継者問題」(2)

スーパー「ライフ」を救った清水会長の「身内切り」 断腸の思いで弟を解任し非同族経営へ

文=長田貴仁/岡山商科大学教授、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー
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 そして清水は、「自分の器量と年齢から見て、もうここで自分は辞めるべきだと判断しました。上場会社でも、あるいは個人でも、自分より優れた人を据えるのが常道ですが、私的欲望もあり、それがなかなかできない。岩崎君は当時39歳だったけれど、私は70歳を超えて自分の限界が見えてきたのと、ちょうど心臓の手術をしなければいけない時期に来ていたので、そろそろ、自分より優れたものを持っている人を後継者に据えなくてはいけない」と考えるようになった。清水は、その条件を満たす後継者を探していたのだ。その結果、断行されたのが2006年3月のトップ人事である。三菱商事から持分法適用会社になったライフコーポレーションに出向していた岩崎を代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)とし、自身は代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)となった。

 三菱商事が清水の申し出に難色を示した最大の理由は、39歳という年齢だ。三菱商事だと、まだ課長になるかならないかぐらいの者が、従業員3万人で200店舗もある1部上場企業の社長を務めた場合、何か事故が起こったときに、三菱の看板に傷が付くと心配され、「これはちょっと無理な相談だ」と難色を示された。だが清水は、「絶対大丈夫です。そのときは私が命を懸けて岩崎さんを守ります。一指も触れさせません。まして商事の傷になるようなことが起こらないよう、私が責任を持ちます」と断言した。

 結果的にこのトップ人事は三菱商事からも理解を得、その後、ライフの経営に良い影響を及ぼすようになった。ちなみに、現在は三菱商事の現役社員が出向しているため、ライフは三菱商事に乗っ取られたと勘違いしている向きもあるかもしれないが、むしろ、小が大の力を活用し、ベストプラクティス(最も効率のよい手法)を可能にしようとしたのだ。例えば、ライフが三菱東京UFJ銀行から融資を受ける際、三菱グループ各社と同じ低い金利を適用されるようになり、無用の預金を持つ必要がなくなる利点が生まれた。

 痛い経験を糧に、身内にこだわらない後継者選びをした清水の賢明な判断だったといえよう。
(文=長田貴仁/岡山商科大学教授、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー)

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