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トヨタ生産方式への誤解「かんばん方式は在庫なし」の嘘 サラダ理論で需要予測不要

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●「意味のない努力」を否定


 このように、コンドーム生産にもTPSが応用されているのである。『トヨタ生産方式の逆襲』は、トヨタ生産方式に関する本でありながら、自動車の話はほとんど出てこない。鈴村氏が指導に出向いている企業は、製麺メーカー、製菓会社、豆腐工場、スーパーなど他業種にわたる。惣菜工場などへも指導に出向き、サラダ生産の現場でTPSを導入している。デパートの地下の売り場を見てもサラダは多品種生産だ。その一方で、マヨネーズなどの調味料、野菜、卵、春雨、ハムなど材料には共通項が多い。いったん混ぜると消費期限が発生するので、売れ残れば廃棄しなければならない。しかし、中間在庫として材料を保有し、売れているものから混ぜ合わせて供給していけば、廃棄のリスクは減る。この「サラダ理論」は食品業界全般に応用できるのではないか。

 だから鈴村氏の指導先は食品関係が多い。消費期限がある食品、特に惣菜などの生ものは過剰在庫=廃棄処分、欠品=機会の損失だからだ。いかに捨てる分を減らして、売れる時に売るかが、会社の業績を左右する。しかも、「水商売」であり、何が売れるかなど需要予測は当てにならない。だから鈴村氏のノウハウが重用されるのであろう。

 また、鈴村氏の考えを見ていくと、「意味のない努力」を否定し、成果に結びつく努力をしましょうということでもある。「意味のある努力」につなげていくためには、パラダイムチェンジが重要であるということも訴えている。しかし、これが案外難しいそうだ。社内にはあらゆる抵抗勢力、特に頭のいいホワイトカラーがいて、できない言い訳や、もっともらしい嘘を考えるからだ。鈴村氏の指導は単に生産現場での業務改善ではなく、会社に巣食う、こうしたホワイトカラーとの知恵比べでもある。

 トヨタはリーマンショック後に大赤字に陥っても、業績を回復させた。戦後の同社の歴史を振り返ると、経営危機が迫っても、それを押し返す危機バネが働く。その大きな理由は一言でいうならば、過去を健全に否定し、環境の変化に即座に対応する経営システムを構築しているからにほかならない。鈴村氏の哲学もそれに通じるものがあり、「トヨタのDNA」を感じることができる。
(文=井上久男/ジャーナリスト)

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