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ワーク・ライフ・ハピネス 第2回

倒産危機から町工場のヒーローへ タブー破りな経営で職人の意識改革、画期的発明続々

文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネス・プロデューサー
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●ワーク・ライフ・ハピネスを実現した浜野製作所

 浜野製作所が取り組んでいる経営改革は、そればかりではない。詳細は『実践 ワーク・ライフ・ハピネス2』(著:阿部重利・榎本恵一、監修:藤原直哉/万来舎)に記されている。同書では仕事を通じてハピネスを実現した会社の事例を豊富に紹介しているが、その一社として浜野製作所が取り上げられている。浜野氏は会社のオープン化を進め、経営の数字だけでなく工場までも開放している。その理由と効果が詳細にレポートされている。そして浜野製作所がなぜ日本の中小企業のヒーローとなったのか、その理由がわかるはずだ。

 浜野製作所がある墨田区には、かつて中小企業が1万社あった。しかし、今では3000社に減り、5年後には500社減り、最盛期の4分の1になるといわれている。今こそ中小企業が知恵を働かせ、勝負していく時代だと浜野氏は語る。

「先日、過去の『プレジデント』(プレジデント社)で、ソニー創業者の盛田昭夫氏と本田技研工業創業者の本田宗一郎氏の対談を読んだのですが、今から30年前に『簡単な仕事は発展途上国に譲ってあげなさい。彼らが豊かになるために譲ってあげなさい。日本はアイデアで生きていきなさい』と語っていました。日本の現状を読まれていたかのようなお言葉でした。私はとても感動し、その通りだと思いました。私たち中小企業は、もっと知恵を働かせ、政府や行政に頼らず、自らの力で歩んでいかなければならないと思います」

 浜野氏は自社だけでなく地域の中小企業の活性化を行うためのプロジェクトも実行委員長として推進している。普段見ることができない墨田区の町工場を一般に開放するという「スミファ」プロジェクトである。このプロジェクトによって3名しかいない町工場にも延べ100名以上が訪問し、そこから新しい仕事の依頼も舞い込んでいるという。

「無理だと思ったら何もできないのです。ちょっとしたアイデアや工夫で、『やればできる』という自信を持つことができるようになるのです」と、浜野氏は目を輝かせて語る。

 最後に、浜野製作所が「ワーク・ライフ・ハピネス」を実現した会社であることを証明する、“ある出来事”を紹介しよう。

 00年の火災から再起して15年目。浜野氏が出社し、いつものように朝礼を行っていたところ、社員全員が唐突に経営理念と行動指針を唱和し始めたという。浜野氏の長年の労をねぎらい、感謝の気持ちを表した行動だった。この社員のプレゼントに、浜野氏は深く感動したという。それ以来、毎朝、自主的に経営理念と行動指針を唱和するようになった。

 これが「ワーク・ライフ・ハピネス」を実現した企業の姿である。働く者が会社を通じてより楽しく幸せになり、経営者もその姿を見て幸せを感じる。これは理想ではなく、すでに実現している企業があることを知ってほしい。それが閉塞感を突破する鍵となるはずだ。
(文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネス・プロデューサー)

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