横の動線計画では、回遊の流れによどみを生じさせないよう、行き止まりや回りにくい箇所をつくらないようにする。通路は緩やかなカーブにし、100メートル先ぐらいまで見渡せるようにする。それくらいの距離はそぞろ歩きにはストレスを感じない距離で、少し歩くと先が見え、また少し歩くと先が見えるという仕掛けだ。その間にいろんな店が目に留まり、回遊自体が楽しくなってくる。

 縦の動線計画では「上階誘導」がポイントになる。人間には「上に上がるのは面倒」との心理的忌避感があるからだ。大型SCの多くが吹き抜けを設けているのは、上階への視認性を高め、心理的忌避感を弱めるのが目的だ。最上階には映画館、カルチャー教室、フィットネスクラブ、レストランなどの「目的核」を配置する。こうしておくと、あとはシャワー効果で客が施設全体を回遊するようになる。

 こうした「SCの原理原則」に基づいた回遊の仕掛けや工夫が凝らされたSCには「ついで買い」のリピーターが集まり、そうでないSCは必然的に淘汰されてゆくという。SCの生存条件は厳しい。

●客を奪われる地方百貨店

 SCはこれまで、「地域の顔」である地方百貨店の客を奪って成長してきたといわれている。その地方百貨店は、この10年間で100店以上が姿を消した。百貨店業界全体の売上高も03年の約9兆7000億円から13年は約6兆2000億円へと64%に縮小。さらに「16年には5兆2000億円まで縮む」(大手百貨店関係者)との悲愴な予測まで出ている。

 そんな業界を象徴するかのように姫路市の老舗百貨店「ヤマトヤシキ」は昨年12月4日、事業再生実務家協会に対し私的整理の一種である事業再生ADRを申請、同日受理され、業歴108年ののれんを下ろした。近隣のSCに客を奪われ、4期連続の最終赤字に陥っていた。

 都心部の一等地に店を構える百貨店は、もともと他業態と比較して競争優位の立場を占めていた。その業態が長期低迷にあえいでいるのは、「店を開ければ『客が財布を抱えて入ってくる』大正時代以来の意識からどうしても抜けられないのが一因」と、大手百貨店関係者は打ち明ける。
 
 加えて買い物は「何かのついで」という消費行動の変化。百貨店はこれまで、消費行動の変化に対しては売り場の改装で対応してきた。だが「消費行動が根源的に変化した今日、売り場の改装ごとき小手先の対応で百貨店に客を呼び込めるわけがない」と指摘する流通業関係者は少なくない。商品を売る以前に、どうすれば客に「わざわざ来てもらえるのか」の工夫が百貨店に欠けているというわけだ。

高齢者を卒業させないSC

 一方、順調に市場が成長しているSCも安閑としていられない。特に大型SCは今後の成長に向けた岐路に立たされていると言っても過言ではない。「今日の百貨店は明日の大型SCの姿」といえる危機が迫っているからだ。

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