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徳岡晃一郎「世代を超えたイノベーションのために」(3月12日)

こんな人は40歳で失速する 20代で蓄えた知識や経験を陳腐化させる30代の過ごし方

文=徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院教授

 そこで、暗黙知を形式知にするネタとして位置づけることが必要なわけだ。最終的に目指すのは知の創造である。「新しい人事のあり方とは」「次の時代の人事とは」という新たな知の創造のために現場での経験を生かすのであって、現場での暗黙知の吸収にいそしみ、現場作業のプロになることが目的ではないはずだ。

「いったい自分は何をやりたいのか」「どういう組織や風土を作っていきたいのか」「どういうイノベーションに向けて組織を構築したいのか」、ひいては「自社はどのように未来の社会創造に貢献すべきなのか」――。こういったことを考えながら、自分の仕事の理論、流儀、哲学を抽出=形式知化する。これが、Eのキャリアの真骨頂である。

 暗黙知に安住することなく、未来の視点でこれまでの自分の価値を再構築することができなければ、マネジメントに提言して新たな時代づくりに参画するプロとして羽ばたくことはできない。暗黙知に安住する人は課長になる時期、つまり40歳前後で必ず失速してしまう。20代の時に溜めこんだ暗黙知が陳腐化し、自分の実力と考えていたものがシロアリに食われた土台のようにボロボロになってしまっているからだ。

 こうした事態を避け、自分の知を形式知化し、プロとしてのコンセプトを作るためにはどうしたらいいのだろうか。やはり、自分の知をあぶり出して客観視する場を作る必要がある。そのために、部門間異動や海外出向、他社とのプロジェクトなどの体験は大いに役に立つ。今までの暗黙知がそのままでは使えない状況になるからだ。好むと好まざるとにかかわらず、それまでの知識を一度整理せざるを得ない環境に身を置くことになる。

 また、MBA(経営学修士)で経営理論を学んだり、他社の友人と議論したり、論文を書いたりすることも、自分を見つめ直して自分の価値を表出化させるためには有効だ。筆者自身も、英国に留学して修士論文をまとめたことが自分の中で大きな転機になっている。

 企業内であっても、教育部門での教育企画の経験、マーケティングのように社会や顧客との接点が多く分析する業務など、コンセプトを大事にする部署での経験は役に立つ。

 このように、企業の中に「Externalization」を行いやすい環境はある。あとは、いかにしてそこに身を置くかが重要だ。人事異動を上司に訴えるのもいいし、社内公募に応募するのもいいだろう。転職でのキャリアアップの際も、そういった意識が重要になる。自分のキャリアは自分で築くわけだが、それをこのSECIに従った知の文脈づくりの観点に立って行うことで、将来必ず花開くものになる。

 次回連載では、40代で重要なSECIのC、つまり「Combination」(コンビネーション)について考えたい。
(文=徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院教授)

徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長

徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長

ライフシフトCEO
多摩大学大学院教授、研究科長、フライシュマンヒラード・ジャパン シニア・ヴァイス・プレジデント、多摩大学社会的投資研究所所長

1957年生まれ。東京大学教養学部卒業。オックスフォード大学経営学修士。日産自動車人事部、欧州日産を経て、99年フライシュマン・ヒラード・ジャパンに入社。人事およびコミュニケーション、企業文化、リーダーシップなどに関するコンサルティング・研修に従事。2014年より多摩大学大学院研究科長、2017年ライフシフトを設立、CEOに就任。主な著書に『MBB:「思い」のマネジメント』(共著、東洋経済新報社)『未来を構想し、現実を変えていく イノベーターシップ』(東洋経済新報社)、『人事異動』(新潮社)、『ミドルの対話型勉強法』(ダイヤモンド社)、『人工知能Xビッグデータが「人事」を変える』(共著、朝日新聞出版社)、『しがらみ経営』(共著、日本経済新聞出版社)など他多数。
株式会社ライフシフト

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