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ルディー和子「マーケティングの深層と真相」(3月14日)

スカイマーク破綻を招いた下手なモノマネ&広報、LCCで唯一ピーチ好調の戦略的理由

文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学教授

 ピーチに関しては、関西財界が積極的にサポートをし、地元メディアでもたびたび大きく取り上げられた。これによって、一般消費者も低価格は低サービスだというトレードオフの関係についてかなり啓蒙されたといえる。

 消費者調査に特化した専門誌「日経消費インサイト」(日本経済新聞社)による『LCC利用者の意識と行動調査2014年』によれば、12年以降に飛行機で国内旅行した人のうち、国内線LCC利用率は関東13%に対して関西30%。それだけPR効果があったということだろう。しかも、ピーチの利用者の2~3割は飛行機を初めて利用した客だ。

事前広報が顧客の満足度を上げるカギ

 サービスを研究するサービスサイエンスという学問においては、客がサービスを利用する前に抱いている期待(事前期待)を、実際に利用した後の感想や評価が上回れば満足することがわかっている。反対に、期待が大きすぎると評価との差が大きくなり、不満足度も大きくなる。つまり、顧客満足は絶対値ではなく、事前期待と実績評価の相対値で決まるとされる。

 そうした観点で見ると、LCCのサービスについて、関西圏以外の日本の消費者は、事前にサービスと価格との間にトレードオフがあることを十分に知らされていなかったのではないかという疑問が生じる。つまり、LCCにはサービスを期待すべきではないという広報活動(啓蒙活動)が足りていなかったということだ。

 例えば、欧州最大の旅客数を誇るLCC、アイルランド・ライアンエアーのマイケル・オーリアリーCEOは、過激な発言で頻繁にメディアをにぎわせる。11年には、機内トイレを有料にしたいと発言して話題になった。「乗客が空港で用を足してくれば、トイレの数を減らすことができ、それが座席数の増加につながり、結果として運賃を安くすることができる」として、有料トイレは客にとっても得になると説いた。

 実施するか否かは別にして、このような発言はメディアも面白がって取り上げ、それが客の事前期待をつくる。06年に持ち込み荷物の有料化に踏み切った際には批判もあったが、「有料にすることで客は機内持ち込み荷物を減らそうと考え、チェックインカウンターや係員の数も減らせるので、コストが下がり、運賃を減らせる」と説明し、実行に移された。手荷物一個につき約500円徴収したが、基本運賃を同額値下げしたため、客も文句を言えなかった。このような経緯であれば、「価格」と「サービス」はトレードオフの関係にあるということを一般消費者も実感できる。さらに、会社経営者のコスト削減に対する真剣さも実感できる。

ルディー和子/マーケティング評論家

ルディー和子/マーケティング評論家

早稲田大学商学学術院客員教授。
国際基督教大学卒業後、結婚・渡米を経て帰国、
米化粧品会社のエスティ ローダー社で働きながら
上智大学国際部大学院経営経済修士課程修了。
エスティ ローダー社ではマーケティングマネジャー、
出版社タイム・インク/タイムライフブックス社での
ダイレクトマーケティング本部長を経て、
マーケティング・コンサルタントとして独立、
自身の会社ウィトン・アクトンを設立
ルディー和子オフィシャルブログ

Twitter:@shouhigaku

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