海外M&Aのリスクは、のれん代の減損

 巨額M&Aにはリスクが伴う。しかし、日本会計基準から国際会計基準(IFRS)への移行が海外のM&Aを後押ししている。M&Aで厄介なのは、のれん代の処理である。のれんとは、企業を買収する際に支払った金額と買収先の企業の純資産の差額をいう。日本基準では20年以内に毎期定期償却する必要があるが、IFRSでは償却は不要だ。

 大型M&Aでは、のれん代が大きくなるため、日本基準だと償却費が膨らみ、利益を圧迫する。一方、定期償却しないIFRSでは当然、利益は大きくなる。海外でのM&Aを推進する企業が、こぞってIFRSを採用するようになった理由はここにある。

 しかし、IFRSはいいことばかりではない。買収した企業や事業が不振に陥れば、巨額の減損を一気にしなければならず、期間損益が大きく下振れすることになる。

 衝撃を与えたのは、1月26日に丸紅が発表した15年3月期決算の減損処理だ。13年7月に2700億円で買収した米穀物準メジャー、ガビロンののれん代の半分に当たる500億円を減損損失として計上することになった。株式市場はガビロンの減損を想定していなかっただけに衝撃は大きく、「丸紅ショック」と呼ばれた。

 2月10日、14年3~12月決算の決算説明会に臨んだソフトバンクの孫正義社長は、珍しく弱気な発言を繰り返した。13年7月に1兆8000億円で買収した米3位の携帯電話会社、スプリントの業績が振るわないためだ。

 スプリントは14年12月期決算で21億3000万ドル(約2500億円)の減損損失を計上した。会計基準の違いからソフトバンク本体は減損処理をしなかったが、孫社長は「減損計上したつもりで経営を遂行する。(不振を)厳粛に受け止めている」とした。

 日本企業による海外企業の大型M&Aで、成功した事例は極めて少ない。今年は海外M&Aが急増しているが、今後、失敗する企業が出る恐れもある。

 ちなみに、過去にM&Aに失敗したのは武田薬品工業、ブリヂストン、ソニー、松下電器産業(現パナソニック)、第一三共、三菱地所、キリンホールディングスなど、そうそうたる企業ばかりだ。歴史は繰り返されるのだろうか。
(文=編集部)

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