進研ゼミなどの会員情報漏洩事件を受けて、同社はセキュリティの強化に努めているが、新しいプログラムは「住所氏名のいらないまったく新しいコンセプト」(原田氏)だという。ベネッセはこれまで添削式の通信教育講座「進研ゼミ」を柱に成長を続けてきたが、原田氏は進研ゼミに依拠する事業からの転換を目指す。「ベネパ」は、今後展開していくデジタル事業の第一波だ。

 原田氏は、ベネッセHD創業者である福武總一郎氏から招聘された。進研ゼミの会員数が年々減少しており、タブレット端末にシフトすることは事件が発覚する前から決まっていた。漏洩事件後に営業活動を停止したため、事業の柱である「進研ゼミ」「こどもチャレンジ」の14年4~12月の延べ会員数は3025万人と、前年同期に比べて220万人、6.8%減った。金額にして82億円の減収だ。

 通信教育業界では、タブレット端末を利用した学習が人気を博している。学研エデュケーショナルの「iコース」、ジャストシステムの「スマイルゼミ」などは専用タブレットを導入している。ベネッセの本格的参入で、通信教育用のタブレット戦争が過熱する。

●巨額の損害賠償支払いの恐れも

 ベネッセHDの経営リスクは、会員情報漏洩事件の影響が長期化していることだ。個人情報が漏れたとして、顧客1700人が同社に1人当たり5万5000円、計約9800万円の損害賠償を求める集団訴訟を起こした。原告は、東京の弁護士らが昨年12月に結成した「被害者の会」に参加した同社の顧客だ。さらに保護者と子供の計363人が、計2820万円の慰謝料などの支払いを求める訴訟を東京地裁に別に起こした。請求額は、保護者や成人は1人5万円、未成年は1人10万円である。

 ベネッセHDは昨年9月、流出した個人情報が約2895万人だったと発表した。補償金計200億円を用意し、被害に遭った顧客に1人当たり500円相当の金券を配布した。同社はこれで補償問題を終わらせるつもりだったが、同様の訴訟が増えれば、請求額がどこまで膨らむかわからない。全員が提訴すれば、請求額が単純計算で1兆6000億円になるという試算もあり、集団訴訟の参加者が増えれば、補償金のために用意した200億円では賄いきれなくなる。

 このほかにも、個人株主が会社法に基づき株主代表訴訟を起こす。ベネッセHDは流出事件に伴う顧客対応などのため260億円の特別損失を計上しており、原田氏ら6人の経営陣に同額の賠償を求める訴訟を起こすよう同社に請求していた。同社が提訴を見送る決定をしたため、個人株主が株主代表訴訟を起こすことになった。

 こうした事態に追い打ちをかけるように、ベネッセHDは3月17日、新たに顧客情報の不正持ち出しがあったと発表した。コールセンター業務を委託しているトランスコスモスの施設内で、同社の30代男性契約社員が14年3~8月頃、顧客情報23人分を紙に書き写して社外に持ち出していたことが発覚した。持ち出されたのは進研ゼミを受講している中学生と保護者の氏名や住所、学校名など。この契約社員が別の事件で警察に逮捕され、押収されたスマートフォンに情報が保存されていた。この契約社員はすでに懲戒解雇されているが、ベネッセHDによると、情報は第三者に渡っておらず2次被害の報告はないという。

 今後も新たに情報漏洩の事実が発覚する可能性も否定できず、この問題はベネッセHDの喉に突き刺さった硬い骨となりそうだ。
(文=編集部)

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