フジテレビ本社(「Thinkstock」より)
そのフジは起死回生を狙い4月から「インターネットによる24時間オリジナルニュースの提供」を始める。それは10年前にライブドアがフジに対して提案した内容と重なるのだが、果たして勝算はあるのか。
●金欠で挑むネットニュースの裏側
「あんな少ない予算と人員でニュースをやるとは。大丈夫か」
フジの24時間ネットニュース『ホウドウキョク24』を知った他テレビ局幹部は、そう首を傾げる。独自ニュースが特徴で、パソコン、タブレット、スマートフォンから視聴可能だ。当初はNTTドコモの有料放送「NOTTV」と「フジテレビオンデマンド」で見ることができる。日本のテレビ局としては初の試みで、プロジェクトリーダーの福原伸治・報道局次長は「ニュースのイノベーションを起こす」と意気込みを語っている。
一見、格好の良さそうな内容だが、漏れ聞こえる内情はそんなものではない。準備室のスタートは今年1月。スタッフにはいきなりの内示だった。配信するニュースは「政治」「経済」「社会」「文化」などの各ジャンル。報道局の記者がニュースのヘッドラインを伝え、識者による解説が加わる。この流れを輪のように繰り返し、随時新しいニュースを挿入する。24時間ニュースの先駆け、米CNNが編み出した「タイムライン」と同じ方式だ。
「放送内容からすれば、丸々一つの放送局を立ち上げるに等しい」(テレビ局関係者)にもかかわらず、準備期間はわずか3カ月で年間予算は10億円に満たず、人員も社員・スタッフで30人強しかいない。CNNでさえスタート時には70人以上のスタッフを抱え、1年の準備期間があった。
「『BS11』を配信するBSデジタル放送局の日本BS放送でも、年間の番組制作費が18億円で社員は70人以上、関係者を合わせると100人以上が携わっており、『ホウドウキョク24』がいかに厳しい予算条件からのスタートかが見て取れます。番組ゲストの出演料も相当安くなるのではないでしょうか」(テレビ局関係者)
ニュースの質も問題だ。「ネットの著作権の関係上、芸能やスポーツニュースでは動画が流せない」(フジ関係者)という。芸能やスポーツでは文字や写真が流れるだけで、24時間もニュースを流し続けることができるのか。
今秋には米国ネット放送の雄・ネットフリックスが日本に上陸し、NHKもネット配信を強化。10年前にライブドアが掲げた「ネットの融合」へテレビ各局が本格的に参入し始める中、果たして『ホウドウキョク24』はその成功事例となるのか。注目を集めそうだ。
(文=編集部)