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鈴木貴博「経済を読む“目玉”」第27回

そもそも「勝てるかもしれない」と思えない競争で、勝つことはできない、という科学的研究

文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役
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 具体的にはITと医薬である。80年代から90年代にはNECや富士通、ソニーといった企業がインテルやマイクロソフト、アップルを凌駕して世界を支配する可能性があると米国で警戒されていた時期があった。ところが今、これらの日本企業がグーグルやフェイスブックを打ち負かす未来を予測する人はどこにもいない。いや、楽天やDeNA、ソフトバンクといった企業ですら、米国にとって代わって世界をリードする立場になるとは誰も信じていないだろう。社員にとっても「日本でどうやって勝ち続けるか」が現実的なビジョンで、海外で勝てる自信を持っていないのだ。グローバルトップ10と規模でも実力でも差をつけられた日本の医薬産業も同じである。

 そして「勝てそうだと思えない」相手と「戦え!」と上の人間が命じても、競争の科学に基づいて予想される結果は、組織としては勝てないということなのだ。だからこれらの産業を日本の成長産業にしていこうと思った場合に重要なことは、勝てそうな土俵を選んであげることである。IT全体ではシリコンバレーに勝てなくても、オンラインゲームに絞れば勝機が見えてくるとか、医薬品全体では無理でも再生医療なら勝てるとか、そういったことが重要なのだ。

 とにかく勝てる可能性がある土俵を選択しなければ、競争を通じた飛躍的な成長は絵に描いた餅になってしまうというのが、最新の競争の科学の成果なのである。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

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●鈴木貴博(すずき・たかひろ)
事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『NARUTOはなぜ中忍になれないのか』『「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱』(ともに朝日新聞出版)、『戦略思考トレーニング』(日本経済新聞出版社)、『カーライル 世界最大級プライベート・エクイティ投資会社の日本戦略』(ダイヤモンド社)などがある。

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