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闘うジャーナリスト・佐々木奎一がゆく! ワーキングクラスの被抑圧者たち 第27回

JR西日本、社員過労死で遺族が提訴し、1億円支払い命令 残業250時間超の月も

文=佐々木奎一/ジャーナリスト
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 この日、夜には帰宅する予定だったが、夕方にW氏は妻に電話し、「帰れなそう」と伝えた。妻が「着替えを持っていこうか」と尋ねたところ、W氏は「いつ休憩を取れるかわからないし、近くで買えるから大丈夫だよ。仕事も朝までには間に合いそうだ」と答えたという。これが夫婦の交わした最後の言葉となった。

 この日の夜、W氏は上司一人と、切り替え工事のリハーサルのための資料作りの準備作業をした。深夜3~4時頃、横になると寝てしまうので、2人はイスで仮眠した。午前6時頃、やっと作業終了のめどがついたところで、W氏は「寝ていてください」と上司を気遣った。

 午前7時50分頃、出社した事務員の女性が、W氏に「どんな進捗状況ですか?」と聞くと、W氏は「全然、進んでいない」と、つらそうに答えた。午前8時頃、同じ事務員が通路ですれ違った際、W氏は「しんどい」と言ったという。

 その後、W氏は、近くのマンションの14階に行き、タバコを吸い、マンションの壁に「ごめんなさい。ありがとう」と書き残し、飛び降り自殺した。

 両親と妻は尼崎労働基準監督署に労働災害申請を出し、13年8月に労災認定された。同年9月、遺族は会社を相手取り、慰謝料や逸失利益などを求めて大阪地裁に提訴し、今年3月20日に冒頭の判決が下った。

 一審判決についてJR西日本に見解を聞いたところ、「弊社社員が亡くなったことについて、深くお詫びし、心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご家族の方々に対しまして本当に申し訳なく、深くお詫び申し上げます。当該社員について、長期にわたって休日出勤や長時間残業があったことは事実であり、弊社といたしましては、こうした事実を真摯に受け止め、引き続き、社員の労働時間管理に万全を期し、再発防止に取り組んでまいります」と答えた。

 なお、裁判資料によると、会社が把握しているW氏の時間外労働時間は、毎月ほぼ30~40時間程度。250時間を超した12年3月に関して、会社の記録では72時間45分、亡くなる前月は、実際には162時間16分だったのに対し、会社には35時間15分としか記録されていなかった。

 要するに、JR西日本では電気工事現場の労働管理ができていないといわざるを得ない。「引き続き、社員の労働時間管理に万全を期し」と述べているが、今まで労働時間管理ができていないのに「引き続き」と言うあたり、今後も変わらないのではないかと疑いたくなる。
(文=佐々木奎一/ジャーナリスト)

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