(1)中国向け輸出・販売業務を独立して行うこと。
(2)丸紅はガビロンから大豆を買い付けてはならない。
(3)市場情報を交換してはならない

 これは事実上、中国でのビジネスを両社が一体となって行うことを禁じる内容である。中国では食料の安定確保のために、国有穀物会社の中糧集団を柱に据えている。中国の大豆輸入で首位の丸紅が、ガビロン買収で圧倒的シェアを占めることを阻止する中国の意図が見て取れる。

 丸紅はガビロン買収後、中国でのビジネスが苦境に陥った。大豆販売をめぐり契約不履行(デフォルト)に直面し、丸紅の中国部門の社員3人が脱税の疑いで拘束された。日中間の政治的対立が経済関係に暗い影を落とした。

 丸紅は大豆の輸入大国となった中国を無視することはできない。無理難題を突き付けられても中国市場から撤退するわけにはいかないのだ。丸紅がガビロンののれん代を減損計上した背景には、中国事業の厳しい事業環境がある。「中国という国のカントリーリスクに対する読みが甘かった」(業界関係者)との指摘もある。

●問われる朝田会長の責任

 丸紅は13年3月期に純利益が2000億円を突破した。13年4月に朝田現会長から社長を引き継いだ国分文也氏は、ガビロンの利益貢献を柱として16年3月期に純利益2500~3000億円への飛躍を目指した。非資源分野を強化してきた丸紅にとって、ガビロンは「丸紅の将来を背負う」重要な案件だった。これまでは、電力業界と紙パルプに強いといわれてきたが、いまや穀物が丸紅の主力事業だ。その穀物事業大躍進の立役者である岡田氏と若林氏の二枚看板が、ガビロンの減損計上の責任を問われ丸紅本社を追われた。

 ガビロンの買収額2700億円と丸紅にとって過去最大の大型M&A(合併・買収)だ。ガビロン買収を決断したのは、当時社長だった朝田氏だった。巨額減損を受け、国分社長と朝田会長が2・3月の役員報酬を50%自主返上した。穀物事業のキーパーソンの2人は更迭されたが、最終決断した朝田会長は役員報酬の返上にとどまる。社内では「トカゲの尻尾切り」と見る向きも少なくない。
(文=編集部)

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