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町田徹「見たくない日本的現実」

関電の老朽原発審査、被災地に理不尽かつ甚大な影響 電気料金の高止まり、瓦解する原則

文=町田徹/経済ジャーナリスト
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 もともと電力会社の中で電源に占める原発の割合が突出している関西電力にとって、原発の運転停止は死活問題だ。代替の火力発電所で必要な化石燃料のコストが膨らみ、その調達コストが経営を強く圧迫するからだ。同社は全部で11基の原発を保有していたが、その中では最も運転年数の若い大飯3、4号機について、福井地裁が昨年5月、再稼働を認めない判決を下した。同社は名古屋高裁に控訴しているものの、先行きは不透明。逆に、最も老朽化した美浜1、2号機は廃炉を決定し、その方針を経産省に報告している。一方、高浜3、4号機はすでに新規制基準の適合性審査をパスしており、早ければ11月にも再稼働したい考えだ。今回の3基が稼働すれば、採算が1500億円程度改善するという。

●運転制限原則の形骸化

 だが、事は関西電力の懐事情にとどまらない。
 
 原発の40年という運転制限原則は、福島第一原発事故発生の翌年に当たる12年6月の法整備で導入されたものだ。当時は民主党政権で、「原子炉等規制法」改正により原則として原発の運転期間を運転開始から40年に制限する一方で、設置法によって新設が決まった原子力規制委員会の認可を得れば1回(20年)の延長ができるという例外規定を設けた。脱原発依存路線を法的に担保することで、原発に対する国民の不安を和らげる狙いが込められていた。自民党の法制反対を抑えるために盛り込まれた例外規定だったが、原則の形骸化が進むことの影響は決して小さくない。

 田中俊一現原子力規制委員会委員長も12年8月、衆参両院の議院運営委員会で、それぞれ所信を表明。「40年運転制限制は、古い原子力発電所の安全性を確保するために必要な制度だと思います。法律の趣旨を考えても、40年を超えた原発は厳格にチェックし、要件を満たさなければ運転させないという姿勢で臨むべきです」と厳しい考えを明確にしていた。

●被災地の電気料金の高止まり解消に遅れ

 そして、もう一つ。東日本各地の電力会社は、関西電力が事後的に老朽原発3基の再稼働方針を打ち出したことを複雑な思いで眺めている。

 というのは、東日本各地の電力会社は、福島第一原発と基本構造が同じBWR(沸騰水型)原発を保有しているからだ。旧原子力委員会時代から、九州電力の川内原発、関西電力の高浜原発、四国電力の伊方原発などPWR(加圧水型)原発が優先的な再稼働対象として扱われる中で、BWRは常に後回しにされてきた経緯がある。

 東日本大震災で被災しながら、これといった事故を起こさなかった女川、東通両原発を保有する東北電力にも、こうした扱いが理不尽なものと映っていなかったとは考えにくい。被災地では、原発に比べて耐震、津波対策がぜい弱な火力発電所の被害が甚大だったにもかかわらず、原発が再稼働できなかったために、供給力の不足と発電コストの高騰に悩まされ続けてきた現実があるからである。