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16年にサラリーマンの残業代がゼロになる 危険な残業代ゼロ制度で年収大幅ダウン

文=溝上憲文/労働ジャーナリスト
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 そうなると歯止めになるのは年収要件だ。当初案は年収も省令で定めることにしていたが、審議会の労働側委員の反対で法律に先の「3倍」を盛り込むことになった。これに苦虫を潰したのは使用者側委員だ。制度の導入を長年主張し続けてきた経団連は、第一次安倍政権の検討時期には年収400万円以上の人を対象にすべきだと主張していた。

 また、経団連の榊原定征会長は「労働者の10%程度を対象にしてほしい」と記者会見で公言している。もちろん、時間規制から外れている管理職以外の10%であり、その数は約500万人だ。審議会でも中小企業の代表は「1000万円以上では中小企業では活用できない。もっと下げてほしい」と要望していた経緯もある。

 経済界は時期を見て、いずれ法改正の陳情を繰り返してくることは間違いない。しかも法改正といっても「3倍」から「2倍」へと数字を変えるだけだ。そうなると624万円。中所得層のサラリーマンのほとんどが対象になることになる。

●準残業代ゼロ制度

 ここまで読まれた20~30代の方は「自分たちは当面関係ない」と思うかもしれない。しかし、そうではない。“準残業代ゼロ制度”の「企画業務型裁量労働制」の拡大で、多くの若年世代が対象になる。

 同制度は、会社が1日の労働時間を9時間と見なせば、法定労働時間の8時間を超える1時間分の割増手当は出るが、9時間を超えて働いても残業代が出ない仕組みだ(ただし、深夜・休日労働は割増賃金を支払う)。

 わかりやすくいえば、ブラック企業で問題になっている基本給に残業代を組み込む「固定(定額)残業代制」を法律で制度化したものだ。現在、この制度を導入している企業はわずか0.8%にすぎない。これまで対象業務が「企画・立案・調査・分析」を一体で行う人に限られていた上に、労基署への報告義務など手続きが煩雑であるからだ。それを今回の改正では手続きを緩和し、さらに対象業務を増やした。追加業務は以下の2つだ。

(1)課題解決型提案営業
(2)事業の運営に関する事項について企画、立案調査および分析を行い、その成果を活用して裁量的にPDCAを回す業務

(1)はいわゆる「ソリューション営業」のこと。客のニーズを聞いてそれにふさわしい商品やサービスを販売する営業職だ。具体的には報告書では「店頭販売や飛び込み販売、ルートセールス」は入らないとしているが、要するにそれ以外の営業をしている人のほとんどが対象になる。

(2)はわかりにくいが、営業以外の事務系の業務を指す。審議会の報告書では「個別の製造業務や備品等の物品購入業務、庶務経理業務」は入らないとしている。一般にいうブルーカラーや定型業務は入らないということだが、それ以外の業務はほとんど入る可能性もある。

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