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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

なぜ日本は、ドイツとアメリカに劣るのか?長期停滞を招いた、悪すぎるビジネス環境

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト
なぜ日本は、ドイツとアメリカに劣るのか?長期停滞を招いた、悪すぎるビジネス環境の画像1ドイツのベルリン(「Thinkstock」より)

 日本経済が長期停滞した大きな原因のひとつは、ビジネスをめぐる環境が、外国に比べると悪かったことにある。ドイツは日本と同様、人口は減少傾向にあるが、近年着実な経済成長を実現している。ドイツは2000年代以降、プロビジネス(経済活動重視)の視点から政府当局が積極的な政策を講じてきた。経済成長の源泉は企業活動にあるゆえ、プロビジネス政策のドイツは成長し、日本は停滞する結果になった。

 こうした中、安倍政権の経済政策はプロビジネス的にシフトしている。日本企業の六重苦のうち第1の円高は、日本銀行の金融緩和により是正された。第2の高すぎる法人税率は、20%台に下げる方向で準備が進んでいる。第3の経済連携協定の遅れに対しては、成長戦略の柱でもあるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)実現を掲げたが、日米交渉での隔たりがあり、実現時期は見えていない。第4の厳しい労働規制は、解雇ルール明確化などに踏み込めず、進展は少ない。第5の厳しい環境規制は、2020年の温室効果ガス排出を1990年比 3%増加との現実的な目標に改めた。第6の高いエネルギーコストに対しては、原油価格が昨夏の半値にまで下落し、少なからずコスト減につながりそうだ。産業の六重苦の解消は道半ばであるといえよう。

●ドイツとアメリカの事例

 一方、ドイツのシュレーダー首相が推進した改革に伴う産業構造の変化を見ると、対GDPでの鉱工業の比率が2002年から08年にかけて少し上昇し、13年時点でほぼ25%を維持していることがわかる。鉱工業の雇用数も維持している。これに対し、日本の製造業の比率は、1996年の25%以降、趨勢として減少を続け、13年には20%まで低下し、雇用者数も減少を続けた。

 これは日独が明確に異なる点であり、日独の立地競争力の違いを反映している。ドイツは、シュレーダー改革を含む政策により立地競争力を高め、国内の製造業シェア維持に成功した。多くの先進国は、経済発展に伴い、1・2次産業シェアの低下と3次産業シェアの増加を示してきた。しかしサービス産業の中でも運輸、卸小売の一部など、製造業あってこその産業もある。製造業のシェアをある程度維持しないと、全産業の雇用や賃金に悪影響を及ぼし、経済全体の活力を損なう。

 比較するために米国を見ると、オバマ大統領が輸出倍増計画を掲げ、低下してきた製造業雇用の維持・拡大と、米国内立地の製造業による輸出の拡大を図っている。米国ではリーマンショック後、製造業の雇用者数は減少してきたが、11年に増加に転じた。その理由は、大胆な金融緩和に伴うドル安傾向、自由貿易協定の拡大・活用、シェール革命によるエネルギーコストの減少などである。同じ理由から、米国では製造業の国内回帰が始まっている。また米国やドイツでは、グローバル化や対外直接投資を進めた産業においても国内雇用が増えている。進出先国ごとに異なる会計や法務制度に対応するための、本社での雇用、税務・法務の専門サービス業の雇用の増加などが背景である。

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。
第一生命経済研究所の公式サイトより

Twitter:@zubizac

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