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「被害者が善、加害者が悪」は正しい?“1億総記者時代”の商業ジャーナリズムへの疑問

文=横山渉/ジャーナリスト
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 ネットメディアと既存メディアの差は、校閲以降のプロセスです。ネットメディアは記者へのバックアップが弱いのが難点です。誰かが恣意的に出した情報を、ウラが取れなくても掲載してしまいます。また、客観的に伝えるためには聞くべきではない、自らの主張を押しつけるような質問を平気でするケースもあり、逆に伝えるべきところを省いてしまうこともあります。もちろん、ネットメディアでも経験値の高いプロが運営しているサイトはそんなことはなく、社会的な信用も得ていますが。

 記者に限らず若い人は「現場」という言葉を多用しますが、その現場はレアな例かもしれません。それなのに現場を強調しすぎると、特異なものが逆に一般的になってしまいます。現象を俎上に上げて、その具体的な例を示すのがメディアの役割です。1人の人間が取材したことは、たくさんのフィルターをかけることで、特殊なのか、どこにでもある話なのか、ニュースとしての価値が変わってきます。ところが、最近は1人か2人しか取材せず、それをもって「世の中はこうなっている」と言い切ってしまう事例が散見されます。

 本作の中では、世代が違う複数の記者を登場させていますが、読者から「ジェネレーションギャップ」を指摘されることがあります。確かにジェネレーションギャップもありますが、そこにあるのはキャリアの差なのです。本作の中で起きている記者たちの衝突は必ずしも年齢だけではなく、経験値の差が大きいのです。

–本作では、「被災して亡くなった僧侶は、実は逃亡犯だったのではないか」という疑惑からミステリーの部分に入ります。「罪」というものに対し、登場人物たちの間で宗教的な概念と法的な概念の相克があります。

真山 外国のミステリーを読んでいると、キリスト教の原罪がモチーフとして頻繁に出てきます。一方で、欧米は法律のルールが厳しい法治国家です。善悪ではなく、リーガル(合法)かイリーガル(違法)かだけの問題として捉えているのです。

「100個よいことをやっても、この1つに関しては違法なのだから裁かれるべき」という考え方が常識となっているのが法治国家ですが、日本の場合、どちらかといえば法律よりも「良い人か悪い人か」が大事になっているのではないでしょうか。

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