
寺に油がまかれるとセコムが儲かる、という考えは経営者に必要な戦略的思考である
「セコム HP」より
「大切なものをないがしろにする気持ちが(犯行に)あった。憤りを感じる」(鹿島神宮の神職)
まったくその通りで嘆かわしいことだが、「管理者側も、かけがえのないものを守れなかった」と指摘しておかなければならない。何しろ預かっているものは、国宝や世界遺産なのだ。
一部施設では監視カメラが設置されていたので、警察はその映像の分析を進めるというが、セキュリティが不十分な施設も多かった。被害に遭った文化財の多くは宗教施設で、多くの訪問者は「参拝に来る」という、いわば「究極の性善説」を前提にしていたところに悪者が入り込んでしまったのだ。したがって、今回の事件を契機にしてセキュリティに対する意識と需要が加速するだろう。
拡大するセキュリティ市場
他方、時代を先見する企業は、すでに戦略的な展開を始めている。
例えばキヤノンだ。同社は、昨年デンマークのビデオ管理ソフトウェア会社、マイルストーンシステムズ社(本社:コペンハーゲン市)を買収した。監視カメラ事業の強化が狙いと見られる。そして今月8日には、スウェーデンのアクシス社の株式を公開買い付けで76%取得して、同社を傘下に収めると発表した。アクシス社は監視カメラで世界首位のメーカーだ。ソフトとハードの強者2社を買収して、キヤノンはそれぞれの分野で世界トップに躍り出る。特に監視カメラのビジネス・チャンスはこれから膨大なものとなることが予想される。
防犯設備の市場が拡大する一方で、施設や企業をアナログで監視警護する、つまりヒトによる警護も需要が高まっている。ヒトによる監視というと、日本ではアルソックやセコムなどの警備会社が有名だ。中でも業界1位のセコムが急激かつ順調に伸びている。警備員を配置する旧来型の派遣サービスだけではなく、ITなどを駆使した「新時代システム警備」というべき分野でも大きく成長している。