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被災地企業の再起を邪魔する国策!全国から集結した「バイト」が起こした奇跡

文=寺尾淳/ジャーナリスト
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 だが、臨時雇用対策は結果的に被災地で多くの雇用を吸収・固定してしまい、そのためハローワークの窓口では求職者が極端に減って「有効求人倍率2倍」という、復興を果たした現地の企業にとっては由々しい事態を生み出してしまった。水産加工場の作業員も、コンビニエンスストアの店員も、宅配便のドライバーも人手不足で、企業は人のやりくりに困っている。

 実際の復興の状況は地域によっても企業によっても大きく異なっており、半年から1年程度で事業を再開し、現在は震災前より売り上げを伸ばしている企業もあれば、事業再開まで2~3年かかり、再開後も業績が低迷している企業すらある。事業を再開できず、廃業した企業も数知れない。そんな中、いち早く復興を遂げ、被災地が以前のにぎわいを取り戻すために公的な補助金も受けながら積極的に設備投資を行って業容を拡大し、雇用を生み出している地元企業に、現在の雇用状況は余計な苦労を背負わせてしまっている。

人手不足打開策の成功例、南三陸町「復興応援バイト」

 東日本大震災とその津波で死者620人、行方不明者214人、総世帯の約62%の3321戸が全半壊という甚大な被害を受けた宮城県南三陸町。鉄骨だけになった防災対策庁舎跡は陸前高田市の「奇跡の一本松」と並ぶ震災メモリアルとして訪れる人も供花も絶えない。更地と化した市街地には防潮堤の工事、地盤のかさ上げ工事でダンプカーが走り回る。地場産業の志津川湾のギンザケやカキ、ワカメの養殖漁業も水産加工業も大津波で壊滅的な被害を受けたが、4年が経過して産業の復興が進んでいる。しかし、震災前は1万7000人を超えていた町の人口は15年2月末現在で1万4081人と、いまだに回復せず、むしろ徐々に減り続けている。

 商店街が復活して被災者も高台の仮設住宅に入居し、その生活が落ち着きを取り戻しつつあった頃の13年4月、「南三陸町復興応援プロジェクト」の一環として、人手不足の問題をアルバイトの募集・派遣で補い、町の産業の復興を手助けする目的で「復興応援バイト」が始まった。

 復興応援プロジェクトは95年1月の阪神・淡路大震災でも活動した社会貢献共同体ユナイテッド・アースが企画・運営しているもので、復興応援バイトは人材派遣会社のガイアサインが実務を担い、事務局を近隣の宮城県登米市登米町に置いている。

 南三陸町でのアルバイトを全国から募集し、派遣社員として水産加工業、観光業などの町内の企業に派遣する。資格は18歳以上(高校生不可)で、期間は水産加工業で3カ月以上、観光業では6カ月以上。ホームページの応募フォームに記入して申し込み、履歴書を郵送するとネットを活用した面談を行った後、希望に応じて派遣先を紹介する。期間中はボランティア活動拠点の寮に寝泊まりして共同生活するが、立場はボランティアではなくアルバイトという労働力である。

 南三陸町では大学生の「復興支援インターン」も受け入れているが、これは1週間程度の短期の仕事体験なので、企業にとって労働力という面のメリットはほとんどない。それに対して復興応援バイトは軽作業に限定されず、生産ラインの作業や接客・案内のような重要な部分の仕事も任され、業務に対する責任感を持つことが求められる。

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