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被災地企業の再起を邪魔する国策!全国から集結した「バイト」が起こした奇跡

文=寺尾淳/ジャーナリスト
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臨時雇用対策が縮小しても、復興応援バイトは縮小しない方針

 東日本大震災の臨時雇用対策の“先輩”である失業対策事業は、戦災の復興が進んでも終了せず、問題を抱えながら50年も存続した。政府は「緊急雇用創出事業」など、被災地の臨時雇用対策は15年度から段階的に縮小していく方針を示している。民間事業への圧迫を避け、自律的な復興を促すというのが主な理由である。離職しても3カ月から1年程度は失業保険の失業給付金が出るので、被災地を管轄する職業安定所の有効求人倍率の高止まりは時間差を伴って低下し、正常化するとみられている。臨時雇いを民間企業の正社員に置き換えると、落ちこぼれる人が出て被災地を去ってしまいかねないという批判もあるが、事業を拡大したくても人がいないと悩んでいる地元企業にとっては、歓迎すべきことだろう。

 南三陸町で今後、離職者が労働市場に出てきて、正社員を募集した企業に応募が集まるような状況になれば、復興応援バイトはその役割を終えるのだろうか。関係者によると必ずしもそうはならない見通しで、規模を縮小せず、なお継続していく方針だという。

 理由の一つは、町の人口が減り続けていること。震災前に比べて減った人口約3000人は20~40代の現役の働き盛り世代が多く、近隣市町村に移り、そこで仕事を得て家も建ててしまうと、南三陸町には戻ってこないだろう。町でも高台の住宅地を造成中だが、住宅が建つまであと2年ほどかかる見込みで、それまでの間は人口の減少に歯止めがかかるとは考えにくく、それが町内での求職者増を抑制するとみられている。

 もう一つの理由は、全国どこでも見られる雇用のミスマッチだ。復興応援バイトの主要な派遣先は水産加工業と観光業だが、水産加工業はとかく3K(きつい、汚い、危険)と敬遠され、震災以前からハローワークに求人を出しても応募が少ない傾向があった。そのため海外からの実習生の受け入れで人手不足を補っていた事業所もあった。今後、求職と求人のアンバランスが解消しても、雇用のミスマッチの問題が残る限り、人手不足の根本的な解消にまでは至らないというのが実情だ。特に長期雇用の正社員を募集する際の苦戦は続きそうだ。

 こうした事情を考えれば、復興応援バイトのニーズは将来も長期にわたって存在し続けるというのが関係者の見方である。自ら希望して被災地で働きたいとやってくるので派遣先でのトラブルはほとんどなく、町内でのアルバイトの評判は概して良いため、南三陸町でも継続を要望している。窓口のガイアサイン(0220-23-9015)では募集を続けている。
(文=寺尾淳/ジャーナリスト)

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