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河村康彦「クルマ、再考」

エコカーブームは危険?規制すり抜け目的で、真の“エコ”に逆行も

文=河村康彦/モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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 現地で“電動化車両”が注目を浴びるようになったのも、やはり環境規制がきっかけだ。ただし、アメリカではCO2排出量の抑制とは別のところに狙いがある。

 アメリカの場合、自動車の排気ガスで問題になるのは、CO2ではなく窒素酸化物(NOx)などの“有害成分”のほうだ。特に、地形が盆地状で空気が滞留しやすいロサンゼルスなどでは、スモッグ防止のために「その地域内では排ガスを出さないこと」が重要視される。

 こういった事情を受けて、すでにカリフォルニアでは「同州内で量販を行うメーカーは、そのうちの一定数を、排ガスを出さない車両(ZEV)にしなければならない」という決まりごとがスタートしている。いわゆる“ZEV規制”と呼ばれるものだ。

 言い換えれば、特定地域内での排ガス削減が可能となれば、そこを走行するPHVやピュアEVに充電する電気は、「離れた地域で、CO2を出して作ったものでもかまわない」ということになる。

 温暖化抑制のためにグローバルなCO2排出量削減を目指す人々からは「いったい、それのどこがエコなのか?」という非難の声が上がりそうだが、このような“奇策”が可能な点も、電動化車両ならではの特徴であることは間違いない。

中国も狙う「エミッション・エルスウェア」

「エミッション・エルスウェア(他の地域での排出)」と表現したくなるようなこの手法に、実は中国も注目している。

 北京や上海など、中国の大都市部では大気汚染が深刻なことが知られている。中国で多くの電力を賄っている火力発電は、低質な石炭を古い施設で燃やすため、排出されるガスの汚染度が非常に高いとされる。

 それにもかかわらず、大都市の大気汚染緩和策として推進されるのが、エミッション・エルスウェアでEVを走行させようというものだ。

 こう見てみると、国や土地によって、電動化車両の持つ意味合いが大きく変わることがわかる。だからこそ、既存のエンジン車両に加えて、HV、PHV、EV、燃料電池自動車(FCV)が開発されたわけで、今後も自動車動力源の多様化は加速していくだろう。

 どんな地域でもEVが一番、あるいはHVやPHVが一番の特効薬となるわけではない。これが、環境問題に対する自動車特有の難しさでもあるのだ。
(文=河村康彦/モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員)

河村康彦/モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

河村康彦/モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

1960年生まれの自動車評論家。自動車雑誌「モーターファン」の編集者を経て1985年にフリーランスとなる。

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