限られた店舗スペースに専用コーナーを設け、専任者を配置しているので、一見コスト高に見える。だが、これが来店客の満足度向上と売り上げ増につながっている。
加えて、同社のパート店員は、同業他社のように商品陳列やレジ業務を行うだけの“作業員”ではない。主婦目線での品揃えや商品陳列のチェック、PB商品企画のネタ出し、時には商品の仕入れや値付けまで行う“営業店員”なのだ。同社関係者は「店員は、みんな地元の主婦なので、今日はどんな商品が、どの程度の値段なら売れるかの感覚が鋭い。このため商品の売り切れ率が高く、その分廃棄ロスが少ないので、同業他社と比べて粗利率が高い」と言う。
こうしたチェーンストア理論の対極にある現場主義に基づく個店経営が、同社の26期連続の増収増益要因と言っても過言ではない。同社には、同業他社が口を揃えるコンビニエンスストアやインターネット通信販売の脅威は感じられない。
この1年間、同社の既存店売上高前期比が食品スーパー業界平均(日本食品スーパーマーケット協会既存店売上昨年比)を毎月4~6ポイント上回る実績で推移したことからも、それがうかがえる。
30年前は、どこにでもある普通のスーパーだった
今では連続増収増益の勢いが止まりそうにない同社だが、30年ほど前はどこにでもある地域スーパーの一社にすぎなかった。
店舗運営はチェーンストア理論に従った本部統制方式。「スーパーバイザーが店を回って品揃えや商品陳列を指導するが、売り場は同じ埼玉県が地盤のベルクやマミーマートと比べても見劣りがしていた」と、同社関係者は振り返る。
経営方針も迷走した。イトーヨーカドーの真似をして精肉・鮮魚の集中前処理と各店への低温配送を行う生鮮食品処理センターを開設して失敗。それが元で精肉・鮮魚の売り上げが長期間低迷した。ほかにもコープを真似た食品宅配事業参入、移動バス販売、業績不振店のディスカウント店への転換など、迷走による失敗例には事欠かない。
迷走に終止符を打ったのは22年前だった。当時社長だった川野幸夫会長が聴講した経営セミナーで、講師が語った「食品スーパーには究極的に2つの生き残り策しかない。どこでも買えるコモディティ商品のディスカウント商法を主力にするか、その店でしか買えない商品を取り揃えた食生活提案商法を主力にするか」という言葉に触発されたのがきっかけだった。