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埼玉の地域スーパー・ヤオコー、なぜ巨人イオンを凌駕?26期連続増益、常識破りの経営

文=福井晋/フリーライター
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 この論法でゆくと、ディスカウント商法は価格競争力に勝る大手スーパーしか採用できない戦略だ。当時、店舗数30店程度の埼玉県の小さな食品スーパーが生き残るための戦略は、食生活提案商法しかなかった。そこで同社は94年に3カ年の中期経営計画を初めて策定し、その中で「食生活提案型食品スーパー」を目指す経営方針を明確にした。

 続く97年の第2次中期経営計画で、食生活提案商法実践に向けた「個店経営」を打ち出し、それまで本部統制だった品揃えを店長に一任するなど、店舗運営の権限を店長に委譲した。本部の役割は店の統制ではなく「店のサポート役」と位置付け、「チェーンとしての個店経営を進める」体制を整えた。チェーンストア理論にない経営だった。

 これは「食生活ニーズは地域により微妙に異なる。微妙なニーズはPOSデータでは把握できない。把握できるのは現場の店長と、地域の消費者でもあるパート店員だ」という川野会長の考えによるものだった。

クッキングサポートは地元情報収集の場

 この個店経営の実験モデルとなったのが、98年10月にリニューアルオープンした「狭山店」(埼玉県)だった。

 生産者の名前を記載した地場産野菜売り場の拡充、総菜売り場の拡充、鮮魚や精肉の下ごしらえ光景がガラス戸越しに見える店内厨房など「個店強調」の演出を随所に施した。この狭山店で誕生したのが、同社名物のクッキングサポートだった。

 同コーナーでは、パート店員が自ら考案した料理を客の前で調理実演し、集まった客に試食してもらうと同時に、パート店員手作りのレシピも配る。それも1品だけではなく、平日で4~5品、土日は7~8品の料理をパート店員は考案し、そのレシピを作る。それを見た客は、レシピにある食材や調味料を買い回る仕掛けだ。販促効果も半端ではない。

 同社はその後、狭山店で原型を確立した事業モデルを「狭山モデル」として00年の第3次中期経営計画以降全店に横展開し、それを各店の切磋琢磨で進化させ、切れ目のない増収増益を達成するバックボーンを形成していった。

 同社関係者はクッキングサポートの販促効果は「レシピに載せた食材・調味料にとどまらない。今では従来の『実演・試食コーナー』から『井戸端会議コーナー』へ進化している」と打ち明ける。

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