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安部徹也「MBA的ビジネス実践塾」

危機マック、心の離れた客はもう捨てよう 従来路線のままでは危機深刻化 再建策を検証

文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO
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 このような危機的状況から抜け出すためにマクドナルドにとって重要なことは、数年前の絶頂期を目指そうとしないことだ。つまり、過去の成功体験を捨て去り、環境変化に応じた経営を心掛けることが危機脱出の鍵を握るのだ。

 原田泳幸CEO(最高経営責任者)時代にマクドナルドはデフレの波に乗り、無料コーヒーキャンペーンや100円マックなど低価格商品の品揃えを充実させ、ハンバーガー業界のみならず、牛丼業界やファミリーレストラン、コンビニなど異業種から顧客を奪う全方位戦略で成功を収めてきた。

 ところが、消費者を取り巻く環境は大きく変わり、安さだけでは顧客の心を引き留めることが難しくなり、デフレ時代にインパクトのあるキャンペーンの実施などで獲得した多くの“にわか顧客”の心は離れてしまったのだ。

 このような心の離れてしまった顧客を再び取り戻すのは難しいことを考えれば、かつて大きな成功を収めた全方位戦略で規模をどんどん拡大していく方向を目指すのではなく、“にわか顧客”の取り込みを諦めて、どんなことがあっても離れなかったコアなファンだけを対象にビジネスを展開していくべきではないだろうか。

マクドナルドの顧客離れは深刻だが、それでも同社がどんなに非難されようとも変わらず利用し続けるコアなファンがたくさん存在するのも事実だ。今後は、規模は小さくなるが、このようなファン客を中心にしたビジネスを展開すべきなのだ。

 ただ、もしマクドナルドが今後縮小均衡を目指すのであれば、損益分岐点売上高が高すぎるという問題に直面することになる。マクドナルドの連結決算では13年12月期の売上高が2600億円で100億円の経常黒字、そして14年12月期の売上高が2200億円で80億円の経常赤字ということを踏まえれば、恐らく現状は2400億円前後が損益分岐点売上高になるはずだ。今後も売り上げ減少が見込まれるのであれば、この損益分岐点をドラスティックに引き下げていかなければならないだろう。

損益分岐点を劇的に引き下げるための鍵になる戦略とは?

 それでは、どうすれば損益分岐点売上高を引き下げることができるのだろうか。

 その重要な鍵を握るのが「固定費の変動費化」である。つまり、人件費や店舗の賃料など売り上げいかんにかかわらずかかっている経費を、売り上げに応じて変わる変動費に転換する必要があるのだ。そのために今マクドナルドが世界レベルで推し進めているのが、フランチャイズの促進だ。米マクドナルド本社では、業績不振に陥った再建策として世界レベルでのフランチャイズ化を推し進め、現状の81%から18年末に90%まで引き上げることを計画している。このフランチャイズ化によりマクドナルド本体の経費はドラスティックに引き下げられ、収益の大幅な改善が見込めるようになるのだ。

安部徹也

安部徹也

株式会社 MBA Solution代表取締役CEO。1990年、九州大学経済学部経営学科卒業後、現・三井住友銀行赤坂支店入行。97年、銀行を退職しアメリカへ留学。インターナショナルビジネスで全米No.1スクールであるThunderbirdにてMBAを取得。MBAとして成績優秀者のみが加入を許可される組織、ベータ・ガンマ・シグマ会員。2001年、ビジネススクール卒業後、米国人パートナーと経営コンサルティング事業を開始。MBA Solutionを設立し代表に就任。現在、本業にとどまらず、各種マスメディアへの出演、ビジネス書の執筆、講演など多方面で活躍中。主宰する『ビジネスパーソン最強化プロジェクト』には、2万5000人以上のビジネスパーソンが参加し、無料のメールマガジンを通してMBA理論を学んでいる。

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