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「ココロに効く(かもしれない)本読みガイド」山本一郎・中川淳一郎・漆原直行

ポジティブシンキング原理主義的な自己啓発へのムズムズするような違和感の正体

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 資本主義社会の盟主たるアメリカを裏支えしてきたイデオロギーを紐解いていく過程は、非常に知的好奇心をくすぐられるものですし、筆致もわかりやすいので、難しそうなテーマでありながらサクサクと読み進めることができるのも、とても心地よいのです。

 本書を通じて、僕が個人的に非常に興味を持ったのは、昨今のビジネス書界隈における自己啓発の文脈との関連です。アメリカ型のポジティブシンキング原理主義的な自己啓発を理解するうえで、本書はとてもよい参考文献になることは間違いありません。

 さらに付け加えるなら、僕が折りに触れてオススメ本として挙げている『ポジティブ病の国、アメリカ』(河出書房新社/バーバラ・エーレンライク著)と併読すると、限界を迎えつつあるアメリカ型の自己啓発、ポジティブシンキングの問題点やムズムズするような違和感の正体がジワジワと浮かび上がってくると思われます。

反知性主義への正しい理解


 ここで念のため強調しておきたいのですが、本書は反知性主義を一概に否定しているわけではない、という点。書中では、次のような記述が登場します。

「(反知性とは)単に知の働き一般に対する反感や蔑視ではない(中略)最近の大学生が本を読まなくなったとか、テレビが下劣なお笑い番組ばかりであるとか、政治家たちに知性が見られないとか、そういうことではない。知性が欠如しているのではなく、知性の『ふりかえり』が欠如しているのである。知性が知らぬ間に越権行為を働いていないか。自分の権威を不当に拡大使用していないか。そのことを敏感にチェックしようとするのが反知性主義である」

 冒頭でも述べたように、最近、反知性主義というキーワードが妙に注目されておりまして、これをタイトルに冠した本も、ここのところリリースが重なっております。例えば、内田樹編著の『日本の反知性主義』(晶文社)、佐藤優と斎藤環の共著『反知性主義とファシズム』(金曜日)などがそうです。また、雑誌「現代思想」(青土社/2月号)では『反知性主義と向き合う』てな特集がドンッと掲載されていたりしますし、タイトルなどでとくに謳ってはいなくても、反知性主義の文脈を盛り込んだ言説は少なくありません。

 それらは往々にして、現状を憂う諦観的、厭世的視点と絡めて語られていたりします。たとえば、ネトウヨ、バカッター、集合痴といったインターネット・ディストピア的文脈、マイルドヤンキー、新保守、貧困といった社会時評の文脈に、反知性主義を絡めた言説もわりとよく目にするものです。

 しかしながら、反知性主義に関する理解を深めた上でそれらの言説に触れると、「そう短絡的に語り切れるものでもないんじゃないかな」と思えるような、極端な論考も多いことがわかってくるでしょう。

 反知性主義を単なるバズワードとして消費してしまうような論調に踊らされない、冷静な視線を自らに組み込んでおくためにも、本書は極めてお役立ちの一冊といえます。
(文=漆原直行/編集者・記者)

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