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江川紹子の「事件ウオッチ」第27回

「戦争法案」批判を安倍首相が封印?いまだ非公開の反軍演説と軽視される議会発言の自由

文=江川紹子/ジャーナリスト
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 このうち国際平和支援法案は、国際社会の平和と安全などの目的を掲げて戦争している他国軍を自衛隊が後方支援するための法律案だ。どんな戦争でも、当事国はたいてい、「平和」や「秩序」や「人々の解放」など、正当性をアピールする目的を掲げるものだろう。「平和」を掲げていたとしても、戦争は戦争。その戦争を支援する法案という点に着目すれば、「戦争法案」という呼び方は、的外れなものではない。

 一方の政府は、平和を構築するために武力行使が必要な場合があり、法案の力点は、戦争支援ではなく、平和に資する武力行使を支援することだ、と言いたいのだろう。ならば、議論の場でそれを主張し、国民に対して丁寧な説明をすればよいだけの話ではないか。政府にとって、開かれた国会での議論は、何も野党議員を言い込めるのが目的ではなく、国民に説明をする場であるはずだ。

 99年の通常国会で周辺事態法が制定される過程で、当時の小渕恵三首相は、まさにそのような対応をした。共産党が特別委員会や本会議で、再三これを「戦争法案」と呼んで批判。これに対し、小渕首相は、同じ言葉を使いながら、やはり繰り返し次のように反論した。

「御党からいえば戦争法案ということであると思いますが、我々としては、平和を確保し、そして我が国の平和と安全を守る法案であると、ぜひ国民の皆さんにも御理解いただきたいと思います」

 安全保障法制に限らず、法案の呼称が、立場によって異なることはたびたびある。それは、その法案がもたらす効果をどう捉えるか、見方によって違うからだ。例えば、一定の年収があり、高度な専門職に就く人を労働基準法の時間規制から除外する、いわゆる「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度を盛り込んだ法案が、今国会に提出されている。政府はこれを「高度プロフェッショナル制度」と呼び、野党は「残業代ゼロ法案」と批判する。政府は「柔軟な働き方を広げて労働生産性を高める」点を重視し、野党は「残業代の支払いもなく、過労死の危険が高まる」と懸念する。

 こうした見方の違いは、まさに政治家の思想信条や政党の主義主張から出ているもので、これを否定しては、議会制民主主義は成り立たない。

過去の歴史に学んで議事録の公開を

 政府は、野党の指摘にも耳を傾け、理にかなっているところは受け入れ、改善する。互いに、妥協できる部分は妥協する。そうして、できるだけ多くの人が受け入れられる法律を目指すが、それでも合意に達しなければ、最後は多数決で決める。これが、民主主義政治の基本的なあり方というものだろう。

 そのためにも、国会での自由闊達な議論が大切。憲法がわざわざ国会内での議員の発言について、「院外での責任を問はれない」と明記して免責特権を与えている(51条)のも、自由な議論を確保するためだ。当然のことながら、議会でどのような議論がなされたのかは正確に記録し、公表され、主権者たる国民の目にさらされなければならない。それは歴史の記録となり、後の人々の評価に委ねられる。

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