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9セルで読み解く 川上昌直のビジネスモデル・シンキング

話題の「オフィスで野菜」サービス、何が秀逸?スモールビジネスにありがちな思考のワナ

文=川上昌直/兵庫県立大学教授
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 ただしどんなに「顧客価値」が立派でも、いかに利益を生むのか考えなければ儲けにはつながりません。起業家の多くは「顧客価値」は熱心に追求しますが、「利益」については行き当たりばったりというケースは多いのです。

「利益」に関して考える時は、9セルの中段にある「利益」を使います。「OFFICE~」は、導入を進める企業を中心に(4)、月額会費を継続的にいただくことで利益に結びつけています(5)。冷蔵庫を設置する初期投資はかかりますが、その費用は月額会費をもらうことですぐに回収できます。

 下段は、このビジネスを実現させるために必要な「プロセス」です。川岸氏は自身がコンサルタントとして農業ビジネスに携わったときに野菜の生産者とネットワークができました(7)(9)。それを強みに、野菜の生産段階から追跡できるトレーサビリティなどを導入して野菜の信頼性をアピールしました(8)。

話題の「オフィスで野菜」サービス、何が秀逸?スモールビジネスにありがちな思考のワナの画像3

「OFFICE~」から読み解くビジネスモデル・シンキング

 川岸氏はコンサル出身者ですから、9セルで改めて見てもビジネスの基本要素はしっかりと押さえていると感じました。特に同ビジネスは、「野菜をデリバリーする」価値提案と「定額課金(サブスクリプション)」を組み合わせた点が秀逸です。野菜というオーソドックスな製品を、従来のような単品売り切りではない方法で提案しているからです。この考えは、イノベーションを起こす上で非常に挑戦的で、筆者も推奨しています(詳細は自著『課金ポイントを変える 利益モデルの方程式』<かんき出版>参照)。

 付け加えるならば、「OFFICE~」の「顧客価値」をもう少し深掘りすれば、将来的に新たなビジネスチャンスが広がる可能性があります。川岸氏は「オフィスに野菜を届ける」という顧客価値を提案していますが、「そもそも顧客が野菜を食べたいのはなぜか?」を考えると、突き詰めれば健康になりたいから、あるいは健康を維持したいからといえます。

 この点は、当たり前のようにも思えますが、実はスモールビジネスがハマりやすい思考のワナです。プロダクトに集中しすぎることで、それを欲する顧客がどのような「片づけるべき用事」を持っているのかについて軽視する傾向にあるからです。

「片づけるべき用事」を考えよう

「片づけるべき用事」とは、「ニーズ」ではありません。ニーズは欲しいものがある程度はっきりとした状態ですが、顧客はそれがわかっていないことのほうが多いのです。顧客はある問題(=用事)を抱えていて、それを解決するための手段の一つとして何かしらの商品やサービスが欲しいと思っているだけなのです。

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