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小林敬幸「ビジネスのホント」

30年後、人工知能が人類を駆逐する?AIの進化で消える仕事と残る仕事

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者
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 概念化ができていることによって、大人が、「それ(=黄色くて丸くて柔らかくて食べるとすっぱいもの)は、みかんだ」と教えると、すぐに「みかん」という言葉を覚えてしまう。そして、次のモノについても、「みかんか、そうでないか」の判別ができる。幼児が短期間に大量の言語を覚えることができるのは、概念化ができており、その概念に対して発音という「ラベル」をつけるだけの状態になっているからだ。

 機械学習、深層学習ができるAIは、幼児が言語獲得の直前に行うモノの概念化を自分ですることができる。グーグルは、自社のAIが「たくさんの猫の写真から、猫の顔の概念を獲得した」と発表して、世間を驚かせた。

人間にできて、AIにできないこと

 人間の例をもう一つ挙げると、深層学習は大人になってから教養を身につけることに似ている。まずは、日頃から文学や歴史をよく読み、個人の心や組織がどう動くのか、概念的に理解する。そうすると、現実に個別の事象に直面した時、身につけた教養に照らし合わせることで、すぐに正しい判断が下せる。

 原理的には、自分で概念化までできるのであれば、コンピュータの性能が上がり、インターネットなどから大量にデータが入れば、AIが人間を追い越すのは時間の問題となる。その技術的特異点が、45年だと騒がれているのだ。

 この実例は、コンピュータの将棋ソフトでも見ることができる。05年に彗星のごとく登場した将棋ソフト「Bonanza」は、棋力11級という「へぼ将棋指し」の技術者によって開発された(もちろん、技術者としては名人級の天才だ)。「Bonanza」は、過去6万局の棋譜から、評価関数のパラメータを自動生成することで学習し、プロ棋士と対等に戦えるまでになった。

 この「Bonanza」がブレイクスルーとなって将棋ソフトの性能が飛躍的に向上し、今ではプロ棋士のほうが分が悪いとまでいわれている。機械学習によって、ソフトの実力が上がっていけば、あと10年もすれば、人類が勝てない将棋ソフトも誕生するだろう。

 それでは、人間にできてAIにできないことはなんだろうか。

 AI研究を行っている松尾豊氏は、著書『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』(KADOKAWA/中経出版)の中で、「AIは人間の持つ本能、つまり快不快の感情を持たないことが決定的に違う」「『人間=知能+生命』であり、いくら知能を作ることができても、生命を持つことはできない。AIが自らの意思を持ったり、AIを設計し直したりすることは、今のAI研究のレベルからはかけ離れている。人工知能が人間を征服したりしない」と語っている。

 確かに、生存のための本能というのは、進化の過程で蓄積されたものであり、完全に同じものを学び取るのは難しいだろう。例えば、寒冷地に住む民族が、これまで見たことがない熱帯の蛇を見て、とっさに逃げることがある。これは、人間の遺伝子に「蛇は危険だから逃げろ」という本能が、進化の過程で入っているからだろう。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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