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“うさんくさい”株式指標は株を買わせるための道具?証券業界の都合で頻繁に変更の謎

文=寺尾淳/ジャーナリスト
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「第三のバブル」到来の可能性も

 PER自体は“堅気の指標”だが、それを不確実性の高い「未来の予測」で割って算出するため、PEGレシオの信頼性には疑問符がつく。利益成長率にアナリストの予想を採用するのであれば、「アナリストの業績予想は本当に信用できるのか?」という、根本的な問題も発生する。仮に信用に足りうるとしても、アナリストには強気派もいれば弱気派もおり、評価の主な着眼点も商品力、財務、経営者の力量など、それぞれ違う。

 一方、過去の実績や今期の企業発表から利益成長率を推定するのであれば、「利益」に何を採用するかという点も大事だ。損益計算書の営業利益、経常利益、当期純利益(最終利益)だろうか。純利益の場合、不動産の売却、有価証券評価損益、災害、訴訟の結果などの不確定要素で特別利益や特別損失が出るため、大きく変動しやすい。営業利益や経常利益のほうが妥当だろう。また、利益率の水準は業界によって異なるので、異業種間で比較する時はどう調整するのかという問題もある。

 このように、PEGレシオにはさまざまな問題点がある。ITやバイオなどの成長途上の新興企業、同一業種などに範囲を限定し、PERの補助として使う分には無難だ。しかし、高PER銘柄を売り込み、株価をさらに上昇させるために証券業界が「待望の新指標」と大々的に宣伝し始めたら、「第三のバブル到来」といってもいいだろう。

 数値から算出される指標は、それ自体に罪はない。しかし、QレシオやPSRがそうだったように、誰かが「株を買わせるための指標」として都合よく利用しようと企んだ時、“やくざな指標”と化してしまう。昔も今も、そういった思惑に乗せられて痛い目に遭うのは投資家だ。
(文=寺尾淳/ジャーナリスト)

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