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武田薬品、上場来初の赤字転落でも高額役員報酬か 創業家の反乱「第2章」幕開けも

文=編集部
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武田薬品、上場来初の赤字転落でも高額役員報酬か 創業家の反乱「第2章」幕開けもの画像1武田薬品工業東京本社(「Wikipedia」より/Lombroso)
 武田薬品工業が2015年3月期決算(国際会計基準)で1450億円の赤字に転落する。最終赤字になるのは1949年に株式を上場して以来、初となる。糖尿病治療薬「アクトス」をめぐる米国での製造物責任訴訟で原告側と和解し、3241億円の引当金を積む方針に大転換したことから最終赤字となる。4月に長谷川閑史氏(現会長)からクリストフ・ウェバー氏へCEO(最高経営責任者)が交代し、アクトスの副作用で膀胱がんになったという原告の主張を全面否定する方針から和解へと大きく舵を切った。

 武田は4月29日、「大半の原告と和解に向け合意した」と発表。アクトスの製造物責任訴訟は現在、9000件にまで拡大している。昨年春に米ルイジアナ州の連邦地裁陪審で、60億ドル(7100億円)に上る懲罰的賠償金支払いを命じる評決が出た。その後、2765万ドル(33億円)まで減額されたが、この時が和解のタイミングだった。9000件に上る訴訟に対応するためには、年間100億円規模の弁護士費用がかかる。和解に応じるには今がギリギリの時期だったが、3241億円の和解金を現金で支払うとすれば武田の財務は傷む。

 武田は従来の主張通り「薬の副作用と膀胱がんの因果関係を認めず、和解した」としているが、和解と裁判での勝訴とは意味合いが違う。「最大市場の北米で係争を長引かせることは得策ではないと判断したが、『副作用問題に終止符を打つ』という武田の思惑通りに事が運ぶかは未知数」(業界筋)だ。

 15年3月期は最終赤字でも、年間配当は予定通り180円を維持する公算。それに伴い、役員の高額報酬も維持するとみられている。14年3月期決算で武田の最高額はフランク・モリッヒ取締役の9億6900万円、米国籍の山田忠孝取締役は8億3500万円、長谷川氏は3億500万円だった。

 15年3月期もウェバー氏を筆頭に役員が軒並み高額報酬を得るようなら、武田のコーポレートガバナンス(企業統治)が厳しく問われることになる。巨額M&A失敗の責任を長谷川氏は取っていないと市場関係者はみている。「長谷川氏を含めて高額報酬の支払いを続ければ、ウェバー氏のCEO就任に猛反対した創業家関係者が黙ってはいない」(業界筋)だろう。

注目される株価の動き

 米国での和解発表翌日、4月30日の東京株式市場における武田の株価に関心が集まったが、5950円(200円安)の売り気配で始まり、差し引き30万株の売り物。5939円(352円安、6%安)が安値。その後、6000円前後で推移し、終値は6157円(134円安)。各証券会社が武田の株式を格下げすると、株価は一気に下落する懸念がある。「赤字企業の株式は手放す」というルールを持つ機関投資家の売りも出てくるかもしれない。武田の主幹事証券会社、野村證券アナリストは「(和解に関連する)費用は想定の範囲。経営陣は今後、新薬育成による業績回復に集中できる」と前向きに捉えているが、これを額面通りに受け止める市場関係者は多くはない。

 5月1日の東京市場で武田の株価は36円高。6193円と小反発したが、07年の上場来高値である8430円と比較すると3割近く安い水準だ。薬品株ではエーザイが3月24日に一時、9756円をつけ、「株価1万円」などと大騒ぎになった。武田の株価は、同社の先行き不安を映し出す鏡である。
(文=編集部)

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