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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

エボラが日本で流行したら起こる最悪の事態 誰が誰に何を指示できるのか?原発事故の悪夢

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 果たして、皆さんは部下に対して、このような危険な地域で働くように「業務命令」を出せるだろうか。部下の身を気遣うと共に、自らの「責任回避」のためにそのような命令は出さないだろう。これが日米を問わず、普通の管理職の判断だ。おそらく、エボラ出血熱が日本で流行すれば同じことが起こる。そうなったら、日本政府は、誰が、どのような権限で、誰を派遣するのだろう。アフリカと違い、少人数の研究者を派遣し、お茶を濁すことはできない。

「難破した船」

 これは、何もエボラ出血熱に限った話ではない。実は、我々はすでに同じような経験をしている。あまり報じられていないが、東日本大震災後の福島でまったく同じことが起こっていた。例えば、原発から23キロに位置する南相馬市立総合病院のケースだ。この病院は、原発の北側に位置する災害拠点病院だ。冒頭に紹介した「原子力災害拠点病院(仮称)」に認定される病院だ。原発事故後、この病院はフル稼働し、政府は全面的に支援したと思われる方が多いだろう。

 ところが、実態は違った。例えば、原発事故が起こると、厚労省から派遣された救急医療チーム(DMAT)は引き揚げ、それ以降、厚労省・日本医師会・日本看護協会は支援に及び腰だった。放射性物質によって汚染された可能性が高く、派遣する職員の安全が保証できないからだ。また、同病院には、政府、福島県、南相馬市からは何の連絡も指示もなかった。原発の爆発などの情報はテレビのニュースを見て知ったという。周囲の情報から完全に遮断された。

 このような状況で、同病院では、事務や清掃などに従事する派遣職員は全員が避難し、医師・看護師などの病院職員も約3分の2が避難した。当時、現場を仕切った及川友好副院長は「病院は難破した船だった」と、孤立無援だった状況を振り返る。ちなみに、同様のことが、米スリーマイル島原発事故でも報告されている。南相馬市では、この「難破した船」に患者が押し寄せた。リベリア同様に多くの開業医・勤務医が避難したため、同病院が、彼らにとっての最後の砦となったためである。

 では、誰が対応したのだろう。実は当時この地域を支援したのは、各地から自らの意思で駆け付けた専門家たちだ。この中に、筆者の勤務する東京大学医科学研究所を中心とした有志も含まれる。このように考えると、福島もエボラ出血熱も状況は変わらない。

自衛隊の役割

 ただ、エボラ出血熱対策と東日本大震災では、大きな相違点があった。それは米軍が関与したことだ。昨年9月、オバマ大統領は米軍関係者約3000人を派遣することを決定し、その中には医師やエンジニアも含まれた。この派遣は、今年2月まで約5カ月間滞在した。災害対策において、通常の政府系機関と軍隊の間には大きな差がある。この差は、軍人は生命への危険を念頭に置いて雇用契約を結んでいることだ。そして、彼らは平素から危機対応を念頭に訓練を積み重ねている。オバマ大統領の施策は適切だったと考える。

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