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鈴木貴博「経済を読む“目玉”」

スマホをタップしている間に人生が終わる…時間の細切れ化→仕事の生産性低下をどう防ぐ?

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 つまり生産性という尺度以外に、もっと重要な別の要素があるのではないか。そしてそれを特定することができれば、時間の細切れ化になんらかの歯止めがかけられるかもしれないという期待も持つことができる。

 1980年代にアメリカの経営コンサルタント、ジョージ・ストーク・ジュニアが、それまでのヒト・モノ・カネという経営資源の捉え方に加えて、時間を経営資源の重要要素に加えるべきだという考え方を提唱した。21世紀に入って同じく経営コンサルタントのトーマス・H・ダベンポートは、時間要素の中でもアテンションを経営資源の要素として重要視すべきだと説いた。アテンションとは「注意がどこに向いているか」という意味で、あることをじっくり考えることに集中できている場合はアテンションがその業務に集中できているし、次から次へと新しいことに注意が移ってしまう場合はアテンションが浪費されていることになる。

 筆者も何かを調べようとインターネットを立ち上げたとたんに、画面上のニュースに目がいってしまい、先にそのニュースをチェックしようと読み始めると、いつのまにか何を調べるつもりだったのかを忘れてしまう。そこで「何をしようとしていたんだっけ」と必死に思い出す時間が、実は仕事の生産性上はとても無駄なのだ。だからアテンションが次から次へと細切れになってしまう働き方は、実は作業の堂々巡りを起こして生産性を下げてしまうというのである。

自衛策が唯一の防御法

 では私たちは、この問題とどう付き合っていくべきなのだろうか。今のところは自衛策が唯一の防御法だと思われる。なぜなら、社会全体でまだこの問題に対する問題意識はそれほど高くはないのだ。だからどうすれば自分の思考がなるべく中断されないようになるのか、その仕事術に磨きをかけるのがこの段階では重要だ。

 例えば、一日の一定時間は「ものを考える」時間に設定して予定表に書き込むだけではなく、本当に外出して近所の喫茶店など身近な他人がやって来られない場所にデスクを移す。その際にスマホが鳴っても我慢をして画面を見ない。「誰からの着信かな」などとチラ見した瞬間にアテンションが移ってしまうからだ。とにかく自分の仕事術の中で、アテンションという資源をどう確保し、どう集中するかを意識すべきなのだ。

 こうして十分な自衛策を実行することで初めて、スマホをタップすること以外の人生の使い方ができるようになってくる。

 最後に管理職の方に一言。「職場でヘッドホンで音楽を聴きながら仕事をしている部下にイラっとくる」という話を聞くことがあるが、これは実は逆かもしれない。その部下の行為は実はアテンションを確保するための自衛策で、ことあるごとに遠くから部下を呼びつけて彼らのアテンションを分断しているあなたの仕事法に対する、抗議のヘッドホンなのかもしれないのだ。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

●鈴木貴博(すずき・たかひろ)
事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『NARUTOはなぜ中忍になれないのか』『「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱』(ともに朝日新聞出版)、『戦略思考トレーニング』(日本経済新聞出版社)、『カーライル 世界最大級プライベート・エクイティ投資会社の日本戦略』(ダイヤモンド社)などがある。

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