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日向咲嗣『「無知税」回避術 可処分所得が倍増するお金の常識と盲点』第14回

首都圏でも1280万円で新築戸建てが買える!装備も充実、デメリットはないのか?

文=日向咲嗣/フリーライター
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 まずは、論より証拠で、上の図面を見てほしい。

 今年1月末、新築戸建ての4LDKが何度かの値下げを経て1280万円で売りに出された。場所は、千葉県北西部の私鉄沿線である。最寄り駅から徒歩16分とやや距離はあるものの、東京都心まで1時間かからないエリアでの敷地150平米、建物99平米の戸建てが1280万円とは、まさに「激安」を通り越した「爆安価格」である。

 テレビモニター付きインターホンから始まって、光沢のあるフローリング、ひとふきで汚れが落ちる最新仕様の対面式システムキッチン、やや大きめのシャワー付き洗面台、真冬でも寒くなさそうな浴室乾燥機付きシステムバス、トイレは1階と2階の2カ所に設置されていて、もちろんどちらも温水洗浄便座付き。断熱効果の高いペアガラスに、晴れた日は遠くを見渡せる南面バルコニーなど、いまや新築であれば、都内4000万円台マンションと比べても、そんなに大きくは見劣りしないだけの装備が標準でついてくる。

 ここまで書くと、まるで不動産会社の広告コピーみたいだが、一応デメリットも挙げておくと、第一に間取りは1階が20畳のLDKのみで、和室がない。標準的な4LDKは、1階にLDKとは別に和室が配置されているものである。第二に、2階は洋室4部屋が四隅に配置されており、そのうち北東向きの部屋が4畳半と狭いため、そこはクローゼットや物置としてしか使えないかもしれない。

 そして決定的なのが、土地の形状だ。建築現場は東西の横長に6棟、東側奥のみ2列に配置された全7棟で、1280万円の物件の6号棟は、いびつな形をした、いわゆる旗竿地のため、評価額は他の区画に比べて極端に低い。

 造成した土地に目いっぱい建てようとすれば、どうしても1~2棟は、そうしたいびつな形をした区割りにならざるを得ないのだが、デベロッパーは戸建てを分譲する時、この旗竿の区画を最初から安く設定して目玉商品にする傾向がある。

 例えば、ほかの物件が2500万円の場合に、奥の一区画だけ1980万円とし、売り出し時には「1980万円~」と掲げ、区画全体を安く見せることができるわけだ。

 今回取り上げた物件も、まさにその典型的なパータンなのだが、その目玉が1280万円と、限度を超えた価格である上、一番高い区画でも2280万円にすぎないので、「釣り広告だ」などと騒ぐ人もあまりいないかもしれない。

新築戸建住宅のバーゲンセールは続く

 もうひとつ事例を見ていこう。今度は、同じ千葉県北西部の同じ私鉄沿線で、最寄り駅が異なる新築戸建てだ。こちらも1280万円まで値下がりしている。

 もう一度、冒頭の図面を見てほしい。右側の物件は、1階は15畳のLDKと6.5畳の和室がある間取りである。2階もすべて6畳以上が3部屋配置されていて、ほぼ標準的な4LDKだ。

 しかも、1280万円と「爆安価格」にもかかわらず、先述の物件のように土地が旗竿ではない。なんと、通常ならいちばん高い価格をつけるはずの1号棟(南西角地)なのである。全15棟ある、ほかの棟も同じような価格がついていることが判明。

 その代わりと言ってはヘンだが、先の物件と比べて最寄り駅からの距離がやや遠く、徒歩25分となっている。その点だけ我慢すれば、ほかのデメリットはほとんどない。

 さて、慌ただしかった不動産のバーゲンセールの季節もすぎ、そろそろ市場も落ち着いてきたに違いないと思い、あらためて不動産検索サイトをのぞいてみると、同じエリアでまだこんなバーゲンをやっていた。「駅徒歩15分 1380~1980万円」。

 デフレ脱却の旗を派手に掲げたアベノミクスだが、不動産のデフレは進行中である。
(文=日向咲嗣/フリーライター)

日向咲嗣/ジャーナリスト

日向咲嗣/ジャーナリスト

1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社・編集プロダクションを経てフリーに。「転職」「独立」「失業」問題など職業生活全般をテーマに著作多数。2015年から図書館の民間委託問題についてのレポートを始め、その詳細な取材ブロセスはブログ『ほぼ月刊ツタヤ図書館』でも随時発表している。2018年「貧困ジャーナリズム賞」受賞。

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