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注目集まる沖縄の物流ハブ、ANAの執念が結実 他社が撤退した“鬼門”の航空貨物

文=松崎隆司/経済ジャーナリスト

「第三のコアビジネスとして、フレイター(貨物専用機)をやりましたが、非常にボラティリティ(価格変動性)の高い事業です。沖縄の貨物ハブは、まだ黒字化を実現していませんが、実際に沖縄に行くと、日本中の名産品が我々の空港で積み替えられ、アジアに送られています。ヤマト運輸も参入し、今後はアジアにハブのハブを作っていくことも考えています。日本のおいしいまぐろが香港や中国本土で食べられているというシーンは、これまで考えられなかったことなので、今後の成長性にさらに期待しています」

 これまで、航空会社にとって航空貨物事業は鬼門といわれてきた。

「貨物事業には、旅客機による輸送と貨物専用機による輸送があります。旅客機は乗客の都合に合わせてフライトしなければなりませんが、貨物専用機は貨物の都合で搬送できるので、最適な輸送ができます」(同)

 しかし、貨物事業はそう簡単ではない。

「旅客機は、乗客と貨物のどちらかで利益を出せばいいので、まだ採算を取りやすいのですが、貨物事業はそうはいきません。帰りに運ぶ荷がないこともよくあるため、採算を取りづらい。だから、貨物専用機というのは扱いにくいのです」(航空業界事情通)

 そういった事情もあり、日本航空(JAL)は10年10月、会社更生法の手続き中に貨物専用機事業からの撤退を表明した。ANAもまた、貨物事業では苦労している。

 ANAは05年10月、国際郵便分野への事業拡大を狙っていた日本郵政公社(現・日本郵政)の郵便事業(現・日本郵便)、日本通運、商船三井と合意し、06年2月にANA&JPエクスプレスを設立した。

 しかし、日本郵便は09年8月に提携を解消し、所有していたANA&JPエクスプレスの株式はANAに譲渡された。そして、10年4月にはANA&JPエクスプレスはエアージャパンに吸収合併され、日本郵政グループのJPエクスプレスもまた、同年9月30日付で東京地方裁判所によって特別清算の開始が決定した。

「合弁会社がANAのグループ企業で乗客の輸送も行うエアージャパンと合併することになり、郵便法の関係で、貨物以外の事業を行うためには総務省の許可が必要な私たちは、合弁の続行は難しいと判断しました。ただ、想定していたより貨物が集まらなかったという事情もあると思います」(日本郵政の関係者)

紆余曲折の沖縄貨物ハブ

 それでもANAはあきらめなかった。新しい国際物流体制の構築を模索し、日本と東アジアを結ぶ国際物流ハブ構築を進めたのだ。

「物流ハブとして、羽田、成田、関空など、さまざまな空港を検討しましたが、成田や関空よりも那覇のほうが駐機料や発着料が安かったのです。成田からは『安くする』という話もあったようですが、最終的に那覇に白羽の矢が立ちました」(前出のANA Cargo関係者)

 しかも、第一次安倍晋三内閣は、日本がアジアと世界の架け橋になることを目指す「アジア・ゲートウェイ構想」を掲げ、07年5月にはアジア・ゲートウェイ戦略会議が設置されていた。

 ANAは07年7月、那覇空港に国際物流ハブを整備することで沖縄県と合意した。

 しかし、沖縄貨物ハブは必ずしも順風満帆とはいかなかった。

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