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注目集まる沖縄の物流ハブ、ANAの執念が結実 他社が撤退した“鬼門”の航空貨物

文=松崎隆司/経済ジャーナリスト

 ANAが参入する以前の08年に935トンしかなかった那覇空港の貨物取扱量は、09年に2万1584トン、10年には14万8164トンと08年の約158倍にも膨れ上がり、成田、関空に次いで3位に躍り出る。

 しかし、11年には14万831トン、12年には13万7352トンと一気に減少、羽田に抜かれて4位に順位を落とした。航空輸送は速い半面、海上輸送に比べてコストが高いという事情がある。

「航空輸送の運賃は、船より10倍以上も高いため、コストに見合った商品でないと運べません。それでも運ばなければならない貨物があるので、私たちの仕事が成立しているわけです」(前出のANA Cargo関係者)

 航空輸送の主な荷物は、半導体部品や自動車部品、精密機械などの機械類、高級食材などの高付加価値商品だが、それらの商品をどう集めるのかというのが最大の課題だ。

 成田や関空は周囲に工業地帯を抱えているが、当時の沖縄は工場誘致が十分に進んでいなかったこともあり、そういった商品が集まる土壌がなかった。

「香港は通関と検疫が簡易なのでいいのですが、その他の国は長時間待たされることが多く、生鮮食品などはその間に傷んでしまうこともあります」(物流業界の関係者)

ヤマトとの提携が転機に

 状況を大きく変えたのは、ヤマト運輸との提携だ。ヤマトは12年11月からANAと提携して、沖縄貨物ハブを利用した国際物流事業に乗り出した。さらに、那覇空港に隣接する同社の国際ロジスティクスセンターで、東芝自動機器システムサービスがパーツ(部品)センターの運用を始めた。

 ヤマトの参入により、13年には那覇空港の貨物取扱量は14万7945トンと前年比7.7%増加している。

 これを目の当たりにしたANAは14年4月、これまで直接行ってきた貨物事業の戦略立案や商品開発を充実させるためにANA Cargoを設立した。ヤマトは13年10月からANA Cargoと提携して、香港向けのクール宅急便事業を開始した。

「それまで、東北地方の魚介類を香港に送るのに3日はかかりましたが、沖縄貨物ハブを使えば、翌日の15時頃には届いています。例えば、青森で穫れた魚介類は仙台空港に送り、関空を経て那覇空港に運び、香港に送られる。魚介類が新鮮なままで翌日には届くので、鮮度を重視する和食店などにはすごく喜んでもらっています。私たちは、国際物流とともに地域復興にも協力できると考えています」(ヤマト運輸の広報担当者)

 中でも、和歌山の桃や四国のいちごなどが売り上げを伸ばしているという。「取扱量は、すでに目標に達しています。今後は、いかに付加価値の高い商品を取り扱えるかが課題になるでしょう」(ANA Cargo関係者)という。

 ヤマト運輸は、3月末からクール宅急便を台湾にも拡大しており、今年度中にシンガポール向けも開始することを発表している。沖縄には、ITや物流において特区が作られ、日本中から製造業者が集まるとともに、機械類の空輸ニーズも高まっている。

 現在の就航は10機だが、2機増えることが決まっており、就航地としてベトナム、インドネシア、インドなどが注目されている。さらに、19年には第2滑走路が完成する予定だ。沖縄貨物ハブに対する期待は高まっている。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)

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