【「月刊サイゾー」立ち読みサイト「サイゾーpremium」より】
――右傾化エンタメが盛り上がりを見せる昨今、池井戸潤作品もこの流れにくみするという声がある。そこで、ナショナリズムに詳しい政治活動家・鈴木邦男氏に読み解いてもらうと同時に、昨今の日本の右傾化についても聞いた。ドラマ『半沢直樹』は面白かったという鈴木氏。池井戸作品は特に読んだことがないそうだが、編集部が持参した『下町ロケット』を持ってパチリ。百田尚樹氏の作品はお好きとのことだ。
今年1月3日配信された「NEWSポストセブン」の「石田衣良氏『右傾エンタメ作品』ばかりが売れる社会を分析」で、小説家の石田衣良氏によるこの言葉。明確な定義はないが、特攻隊員だった祖父の足跡を追い求めるというストーリーを描いた百田尚樹による小説『永遠の0』(太田出版)は映画化され、興行成績8週連続1位を記録。スタジオジブリの『風立ちぬ』は、戦闘機の設計技師である堀越二郎の半生を描いた作品だ。また、音大卒業後、航空自衛隊の音楽隊に入隊した主人公の活躍を描く『碧空のカノン 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート』(光文社・福田和代)や、航空自衛隊の広報官が主人公の『空飛ぶ広報室』(幻冬舎・有川浩)など、自衛隊を舞台に描く作品も盛んになっている(あるいは、『艦隊これくしょん~艦これ~』も、これに組み入れることができるだろう)。
こうした作品の中に、高度経済成長からバブル期という、戦後の日本が一番輝いていた時代を取り上げ、ナショナリズムを発揚させるとして池井戸潤氏の作品も入るという指摘があるようだ。
確かに池井戸作品には、戦中を舞台に描かれた作品や、自衛隊を描いた作品はない。だが、直木賞を受賞した『下町ロケット』(小学館)では、「日本の技術力」「ものづくり大国・日本」を象徴するかのような大田区の中小企業・佃製作所を舞台に設定しており、『半沢直樹』の原作である『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』(文藝春秋)では、バブルという日本が最も栄華を誇った時代に、日本的経営の象徴である銀行に入行した世代の活躍を描いている。そこには、どこか「戦後日本」に対する誇りを持った視線が入り混じっており、そんな日本人のプライドをくすぐる感覚は、「右傾エンタメ」が持つ傾向のひとつだ。
そこで、新右翼団体「一水会」の元代表・鈴木邦男氏に、昨今の「右傾エンタメ」ブームを踏まえて、ドラマ『半沢直樹』(TBS)をどのように見たのかを聞いた。
カタルシス重視の半沢直樹的ナショナリズム
まず、鈴木氏は、ドラマ『半沢直樹』をどう見たのか?
「ドラマは見ていました。とても面白かったですねえ。ドラマの最後で、半沢直樹は左遷されてしまったけれども、あれは視聴者に対する『現実に戻れ』というメッセージなのではないかと思いましたよ!