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今枝昌宏「ビジネスモデル考」

日本の連合艦隊、なぜ戦力の大きい露バルチック艦隊を撃破?ビジネスモデルの本質とは

文=今枝昌宏/エミネンスLLC代表パートナー
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ビジネスモデルを記述するツール

 ところで、ビジネスモデルを記述する道具として「ビジネスモデル・キャンバス」が人気である。これは、ビジネス要素を必要十分に分解して記述できるフレームワークであり、要素の記述としては優れているが、ひとつの欠点を持っていると私は考えている。

 それは、ビジネスの要素をスナップショット的に記述するものであるため、構造の記述には向いても、ダイナミズムを記述することは不得手であるということだ。このツールが人気を博す一方、このツールが従来の戦略論に近いものであるため、従来の戦略論とビジネスモデルとの意味の違いを曖昧にし、誤解を招いている可能性もある。

 そのため、ビジネスモデルを記述するには、ビジネスモデル・キャンバス以外にダイナミズムやプロセスを記述する工夫をすることになる。ピクトグラムという記述方法も工夫されており、こちらは時間の経過、つまりダイナミズムを記述できる点でビジネスモデル・キャンバスよりも優れている。しかし、ピクトグラムでは記述をする範囲がいわゆるレベニューモデルに限られ、対象とする顧客や提供価値、価値提供を実現する上での仕組みなどを記述できない点が残念だ。

 つまり、それひとつで万能というツールはないのだ。私はビジネスモデル・キャンバスを使いながら、ダイナミズムの記述を個別のモデルごとに工夫するのがいいのではないかと思っている。

ビジネスモデル思考の鍛錬

 最後に、ビジネスモデル思考を鍛える方法について考察しよう。

 構造やダイナミズムを含むビジネスモデルについての感度を上げるためには、どうしたらいいのだろうか? 残念ながら、ポジショニングを中心とした戦略ほど、ビジネスモデルの研究は進んでいないのが実情である。

 ダイナミズムは、ある程度の「読み」を必要とし、そこに経験やアートが介在するため、ロジックの対象にしがたく、教育が難しいのである。ちなみに、このロジックの対象にしにくいという特徴があるため、コンサルティングの対象にもしにくい。

 私は、同じくダイナミズムを用いた競争のゲームである武術や将棋などと同様に、技や定石といった過去の経験から典型的に有効なダイナミズムのパッケージ化を行い、これを繰り返し学習することが有効だと考えている。そのような方針のもとにビジネスモデル研修の開発を行い実施しているが、中間管理層の教育としては、十分に成果が上がる研修となっていると自負している。
(文=今枝昌宏/エミネンスLLC代表パートナー)

今枝昌宏

今枝昌宏

エミネンスLLC代表パートナー。京都大学大学院法学研究科、エモリー大学ビジネススクールMBA課程卒業。ジャパンエナジー(現JX)、PwCなどのコンサルティングファーム、買収ファンドであるRHJI(旧リップルウッド)などでの勤務経験を持つ。著書に『ビジネスモデルの教科書』『サービスの経営学』など、訳書に『戦略立案ハンドブック』(いずれも東洋経済新報社)がある。ご連絡は、imaeda@eminent-partners.com まで。

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